改訂新版 世界大百科事典 「ヒンチン」の意味・わかりやすい解説
ヒンチン
Aleksandr Yakovlevich Khinchin
生没年:1894-1959
ソ連の数学者。関数論,数論そして確率論とその応用について偉大な業績を残した。1911-16年までモスクワ大学数学物理学部で学ぶ。18年より教職につき,27年モスクワ大学教授となり,A.N.コルモゴロフとともに確率論モスクワ学派の創始者として,その栄光の礎を築いた。1916年に発表した彼の最初の論文は積分論に関するもので,興味はしばらく解析学にあったが,22年以後は数論,そして確率論に移っていった。(0,1)区間のほとんどすべての数aについて,その二進法展開ではじめのn位までに1の現れる回数と\(\frac{n}{2}\)との差μn(a)は,重複対数の法則,に従うことを厳密に証明した。これは直ちに独立確率変数の和についての同じ名まえの法則に発展した。それに関連して,確率論における無限分解可能な法則,定常確率過程の一般論や共分散関数のスペクトル表現の研究,統計力学,情報理論への貢献も有名である。
執筆者:飛田 武幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報