コルモゴロフ(読み)こるもごろふ(英語表記)Андрей Николаевич Колмогоров/Andrey Nikolaevich Kolmogorov

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コルモゴロフ」の意味・わかりやすい解説

コルモゴロフ
こるもごろふ
Андрей Николаевич Колмогоров/Andrey Nikolaevich Kolmogorov
(1903―1987)

ソ連数学者。モスクワ近くのタンボフ生まれ。1925年モスクワ大学を卒業、1931年からモスクワ大学教授となった。1939年にはソビエト科学アカデミー(現、ロシア科学アカデミー)会員に選ばれ、その後、スターリン賞を受賞、また社会主義労働英雄となり、1967年にはアメリカ科学アカデミー会員、続いてパリ科学アカデミー外国人会員に選ばれている。

 幼時に母を失い、おばの手で育てられ、大学へ入る前、列車車掌も務めたが、このときニュートン力学の勉強をした。大学入学時には、ロシア史の研究もしていたが、このとき数値計算の問題にぶつかり、数学に関心をもつようになった。そしてステパーノフV. V. Stepanov(1889―1950)の三角級数のセミナーに出席し、これを機会に研究の中心は数学へと傾いていった。1922年には、ほとんど至る所で発散するフーリエ級数の例を構成した。大学を出てから確率論に興味をもちだし、1929年には確率概念の公理化に成功した。この成果は彼のドイツ語著作『確率計算の基本概念』Grundbegriffe der Wahrscheinlichkeitsrechnung(1933)で発表された。これは、確率論の基礎を確立したもっとも重要な仕事である。その後も確率論をはじめ数学の多く分野、たとえば集合論におけるコルモゴロフ演算子、エルゴード問題、一般化された空間における代数的位相幾何学の構成、ヒルベルトの問題の解決などに貢献した。

[井関清志]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コルモゴロフ」の意味・わかりやすい解説

コルモゴロフ
Kolmogorov, Andrei Nikolaevich

[生]1903.4.25. タンボフ
[没]1987.10.20.
ソ連の数学者。モスクワ大学卒業 (1925) 。引続き研究員として大学にとどまる。同大学教授 (31) ,同大学の数学研究所所長に就任 (33) 。初めはロシア史および古代ロシア美術に興味を示す。在学中からオリジナルな研究を始め,1925年頃から取組んだ確率論に関する研究は最も有名な業績で,大数の強法則に関する「コルモゴロフの定理」や確率過程に関する彼の定理がある。また測度論によって確率論を公理的に構成し,『確率論の基礎概念』 (33) を著わし,現代確率論を樹立した。青少年の数学教育に熱心で教科書を執筆したり,数学教育の団体の長をつとめたり,中等レベルで新しい数学の科目を導入するなど,この分野でも指導的役割を果した。また,弁証法的唯物論に基づいた数学史の著作もある。ソビエト国家大賞 (40) をはじめ数々の名誉を受けた。

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