改訂新版 世界大百科事典 「ファーグム」の意味・わかりやすい解説
ファーグム
Fa Ngum
生没年:1316-75ころ
現在のラオスと東北タイに,ラオ族を中心として14~18世紀に展開した仏教王国ランサンの初代王。在位1354-73年。彼の事績は16世紀に成立した歴史物語《ニタン・クンブロム》と信憑性の高い《ランサン年代記》にみられる。前者の一半はファーグムにまつわる英雄譚であり,アンコールの王宮で育ったファーグムは,カンボジアから兵を率いて北ラオスにいたり建国したとされているが,北部での政治的できごとはむしろモンゴル・元朝的要素を反映している。同じくカンボジアから彼が将来したという上座部仏教の同時代遺跡はスコータイ的である。ファーグムは北・中ラオスを統一し,シュンクワン高原(ジャール平原)のプアン国を臣従させ,16世紀以降全盛期を迎えたランサン王国の礎を築いた。治世の末期には長子サムセンタイが雲南から派遣された元朝の官人により連れ去られ,この官人一派によりファーグムは1373年西方のナーン国へ追放され,数年を経ずして同地で死去した。
執筆者:星野 龍夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報