改訂新版 世界大百科事典 「フィンランド学派」の意味・わかりやすい解説
フィンランド学派 (フィンランドがくは)
民俗学の一学派。フィンランドのユリウス・クローンJulius Krohnが民族叙事詩《カレワラ》の歌謡群の研究に採用した〈歴史・地理学的方法〉を,彼の子カールレ・クローンとその弟子アールネとが昔話の研究に適用して確立した方法論による一派で,またその学風をも指す。昔話研究の場合は,できる限り多くの類話を集めて,その地域的・年代的相違を比較研究しながら,原型,発生地,成立時期,伝播経路などをさぐって昔話の基本形式を求めることを目的とするが,カールレの弟子のなかでもU.ハルバやマンシッカV.J.Mansikkaなどは民間信仰や呪文の研究に応用して成果をあげた。日本の民俗学者の間でも柳田国男が早くからカールレやアールネの方法や業績に注目し,弟子にすすめて彼らの主著の翻訳紹介をはかったほか,みずからの方言研究にも実験的にこの方法の適用を試みたといわれている。
執筆者:菊川 丞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報