フォトトロピー(英語表記)phototropy

改訂新版 世界大百科事典 「フォトトロピー」の意味・わかりやすい解説

フォトトロピー
phototropy

ある種の物質に光を照射すると変色し,照射を中止すると元の色に戻る可逆的な現象。フォトクロミズムphotochromism,光可逆変色などともいう。1899年にマルクワルドW.Marckwaldはテトラクロロ-β-ケトジヒドロナフタレンの結晶に光を照射すると変色することを発見し,この現象をフォトトロピーと呼んだ。その後この現象は,溶液中の数多くの有機化合物についても起こることが見いだされた。機構的には,ある種の分子が光を吸収して,(1)シス-トランス間の幾何異性化を起こしたり,(2)分子内で,ある原子の位置が著しく異なる互変異性化を起こしたり,また(3)結合切断による安定な遊離基や遊離イオン生成などの化学変化を起こすことなどによって,光の吸収スペクトルが変化するが,照射を停止すると熱的に元の分子に戻ることによる。各種のサリチリデンアニリン,スピロラン化合物,視覚に関与する色素である視紅(ロドプシン)など,多くの有機化合物について知られている。ヨウ化カリウムKIや臭化ルビジウムRbBrのようなハロゲン化アルカリの結晶やその他多くのイオン性結晶についても,この現象が知られている。この場合には,光照射による色中心が生成することによる。この現象は,光互変と訳されているが,フォトトロピーの現象そのものは,光によって互変異性するものだけではない場合を含んでいる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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