「和蘭字彙」にあるのが古く、蘭学者による造語と考えられる。その後、「英和対訳袖珍辞書」(一八六二)にも複合語を含め、少なからず訳語として使用されており、明治初期には一般化したと思われる。
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光刺激によって生じる感覚で,明暗を感じる感覚を光覚,色を感じる感覚を色覚という。おもな感覚器は目である。原始的な光覚は神経光覚器や皮膚光覚器によって起こる。よく発達した視覚は聴覚や嗅覚と同様に,動物が遠くはなれた所からの情報を得るのに重要な感覚である。ことに外部の情況を立体的に知るうえでは視覚が最も優れている。視覚機能は明暗識別や光源の方向識別,あるいは対象物の形態や動き,対象物までの距離などの識別や色彩弁別に分けられる。
原始的な神経光覚や皮膚光覚では明暗の識別ができる。例えば,オオノガイのような二枚貝は,水管に影がさすと水管を反射的に引っ込める。影にのみ応答するので陰影反射と呼ばれている。原始的光覚器は脊椎動物にもある。例えば,魚類や両生類,爬虫類の脳の松果体は,光の明暗に応答する光覚器である(顱頂眼(ろちようがん))。光がくる方向に,またはその逆方向に定位して動物が動くことを光走性というが,光走性は原始的な光覚器をもつ動物から,発達した目をもつ動物までみられる一般的な視覚行動である。例えば,ミミズでは光走性は,皮膚光覚器により明暗を手がかりに行われるが,昆虫では,複眼により光源を網膜にとらえたり,左右の目に入る光の明るさが等しくなるように動いて光源に定位する。
発達した視覚器としては節足動物の複眼や脊椎動物と軟体動物頭足類のカメラ眼があげられる。これらの目は比較的よい解像力をもち,形の識別,動きの識別などに適している。例外はあるが,解像力は一般に体高の高い動物の方がよい。視力1.0のヒトの目の分解能は0.01度であるが,ネコでは約0.1度,トンボでは約1度,ハエでは約2度である。光点の点滅を識別できる限度を点滅の頻度で表したものをフリッカー融合頻度(ちらつき融合頻度)というが,この頻度が高い方が動きの識別能力が高い。ヒトのフリッカー融合頻度は70~100Hzであるが,ハトでは150Hzと高く,また速く飛ぶ昆虫ではフリッカー融合頻度はひじょうに高く,例えばハエでは約300Hzである。したがって,昆虫は図形識別能力は悪いが,動きの識別は格段によいことになる。また,脊椎動物の霊長類や鳥類,魚類などや,昆虫類には色覚が発達した動物がある。
動物の視細胞visual cellは光で刺激される部分が特別な構造をしている。脊椎動物の視細胞の光刺激を受容する部分は外節と呼ばれ,膜が重なり合った構造になっていて,この膜に感光色素が配列している。外節は繊毛の変形したものである。脊椎動物の視細胞は,外節の形の違いにより錐体と杆体(かんたい)に分けられる。錐体は明るいときの視覚(昼間視)に関係し,杆体は薄暗いときの視覚(薄明視)に関係する。錐体は刺激となる光の波長の違いで3種類のものが区別され,色覚に関係する。
無脊椎動物の視細胞において光刺激を受容する部分は,微絨毛が突き出して密生した構造のものが多く,繊毛が変形したものは例外的にしか知られていない。複眼では個眼に数個の視細胞があり,各視細胞は個眼の軸の周りに微絨毛を突き出すので,個眼の中心には軸に沿って細長い杆状の微絨毛の集合物ができる。これを感杆と呼び,このような視細胞を感杆型の視細胞と呼び,脊椎動物の繊毛型の視細胞と区別することがある。
視細胞に光が当たったときに,光のエネルギーを吸収して光化学変化を起こすのが感光色素である。杆体の感光色素はロドプシンで,光が当たると分解してビタミンA1のアルデヒドであるレチナールとオプシンというタンパク質になる。暗黒中では,十分レチナールが存在するときには,レチナールとオプシンからロドプシンが再生する。錐体の感光色素はアイオドプシンである。昆虫や軟体動物頭足類の感光色素もロドプシンであるが,脊椎動物のロドプシンとは異なり,完全に分解せずにメタロドプシンに変わるだけである。
光刺激により視細胞には膜電位変化が起こる。脊椎動物の網膜には双極細胞や水平細胞,アマクリン細胞などの介在神経があり,視細胞に起こった変化はこれらに伝えられ,最後に視神経のインパルスとなり,大脳皮質に伝わる。光刺激に対する視神経繊維の応答の特徴の一つは,側抑制がみられることである。側抑制は,最初カブトガニの複眼の視神経繊維で観察されたもので,一つの個眼を光刺激すると,刺激された個眼の視神経繊維にインパルスが発生すると同時に,隣接する個眼の視神経繊維には興奮が起こりにくいように抑制がかかる現象をいう。側抑制は明暗の境界線での対比を強調するなどの働きをする。
執筆者:立田 栄光
ヒトの視覚に目が必要なことは万人の知るところであるが,目は視覚の入口にすぎない。物の映像は目によってとらえられ,視覚信号に変換され,視神経によって脳に送られ,これが脳によって処理されて初めて視覚が成立するのである。このような視覚認知の過程はコンピューターによる文字読取りの働きと対比される。文字読取りの場合は,文字の映像がテレビカメラによってとらえられ,これが電気信号に変換され,コンピューターにより分析されて,文字が判読される。文字の読取りは,テレビカメラによる光学的な図形情報から,電気的な図形情報への変換と,コンピューターによる電気的な図形情報の解読の二つの過程をふんで成立する。視覚認知もまったく同じようにこの二つの過程からなる。第1の光学的な視覚情報から,電気的な視覚信号への変換が目の網膜で行われ,第2の視覚信号の解読が大脳で行われるのである。
外界の映像は目のレンズ(水晶体)を通して,網膜に投影される。網膜には数億個の神経細胞があり,ここで光学的な映像が電気信号に変換される。この電気信号が100万本の視神経繊維によって大脳の視覚中枢に送られる。1本1本の視神経はいわばテレビの画像の画素にあたり,その反応の強さは画素の明るさを表す。視神経の数が多ければそれだけ精細な映像信号を大脳に送ることができる。網膜は単に光学的な映像を忠実に電気信号に写像するだけでなく,映像の輪郭などの視覚認知に欠くことのできない重要な成分をとくに強調して大脳に送る。この働きは側抑制と呼ばれる神経機構によって行われる。
大脳の視覚中枢(視覚野ともいう)は左右の大脳半球の後部(後頭葉)にある。両眼から出た視神経繊維は,視交叉部で内側の視野からくる半数が交叉(これを半交叉という)し,交叉しないそれぞれの外側の繊維とともに,左右の後頭葉へと導かれる。この結果,右側の視野の視覚情報は左側の大脳で,左側の視野の情報は右側の大脳で処理される(これを〈対側支配の原則〉という)。
大脳の視覚中枢には約10億の神経細胞がある。これらの細胞はそれぞれ特有の図形にだけ反応する。この性質は反応選択性と呼ばれ,大脳の視覚細胞の働きを左右する最も重要な特性である。図形が示されたときにある細胞が反応すれば,その細胞が好んで反応する特徴がその図形に含まれていることを意味する。だから細胞は図形の特徴をとり出す特徴フィルターの働きをもつ(これを特徴抽出機能という)といえる。視覚中枢では図形は特徴の集りとして認知される。網膜では図形が,さまざまの明るさをもつ点の集りとして認知されるのと対照的である。
視覚中枢は特徴抽出機能に基づいて第一次視覚野と高次視覚野に区分される。網膜から送られてくる視覚情報はまず第一次視覚野で分析され,その結果が高次視覚野に送られ,さらに,高次の視覚情報がとり出される。
第一次視覚野には直線の位置,幅,傾き,角,運動方向,黒白あるいは色コントラストなどの特徴(これらを図形の幾何学的パラメーターという)に反応する細胞がある。神経細胞はこれらのいくつかのパラメーターに対し,反応選択性を備え,その条件がすべて満足されたときに初めて反応する。これらの細胞により,すべての図形は直線成分に分解され,その幾何学的特徴(例えば正方形の辺,角,傾き,位置)や図形の運動方向,左右の目でとらえられる位置のずれ(視差),色(光の波長)などの視覚情報がとり出される。
第一次視覚野が視覚神経から送られてくるあらゆる視覚情報を扱うのに対し,高次視覚野はいくつかに区分され,ある視覚情報を専業的に分析する。例えば,色の認知を担当する高次視覚野(ここを色中枢という)では,すべての細胞が色に対して反応選択性をもつが,他の特徴に対してはほとんど反応選択性がない。ここの視覚細胞はどのような光の下でも,色を正しく判断する働き(これを色恒常性という)をもつ。青みがかった光で赤い色紙を照らせば,赤い色紙から反射される光は青い光の成分を強く含む。逆に赤みがかった光の下では赤い成分の光が強く反射される。このような条件の下でも色中枢の細胞の色紙に対する反応性は変わらない。赤色に反応する細胞はどちらの条件でも赤い色紙に反応する。第一次視覚野の赤細胞が赤い光で照らされた青い色紙に反応し,青い光で照らされた赤い色紙に反応しないのと対照的である。第一次の視覚野は色紙から反射されてくる光のスペクトル成分に対してのみ反応選択性をもつ。だから赤細胞は赤い光のスペクトル成分が強ければ,色紙の色とは関係なく反応するのである。しかし色中枢の細胞は,見ているものから反射される光の赤成分の相対的スペクトル強度に対して,反応選択性をもつ。そこで赤細胞は,見ているものから反射された光の赤成分のスペクトル強度が,周りのものから反射されたものよりも相対的に強ければ,赤成分のスペクトル強度とは関係なく反応するのである。この反応選択性は,いくつかの第一次視覚野の細胞で分析された光のスペクトル成分の情報を総合して得られると考えられる。
三次元の動きも高次視覚中枢によって専業的に分析される。前後方向の動きは次のような二つの視覚的手がかりを使って認知される。一つは,物の動きを両眼の網膜上の動きの違いから認知する方法である。すなわち,物が鼻に向かって近づくときには右目の網膜の映像は右方向,左目では左方向に動き,遠ざかるときには左目では右方向,右目では左方向の動きが生じる(これを運動視差という)。等距離で運動するときにはこのような運動視差は生じない。いま一つは,像の大きさから検知するもので,物が近づくときには網膜の映像の大きさは距離に反比例して大きくなる。運動認知の中枢にはこの二つの視覚的手がかりの組合せに対して反応選択性を持っていて,前後方向の動きを認知する細胞がある。例えば接近運動を認知する細胞は右目に右方向,左目に左方向の運動視差と映像が大きくなるという刺激が組み合わさって生じたときに反応する。言い換えれば,この二つの視覚的手がかりが生じたときには,そのものは近づいてくると判断するわけである。左右の目でとらえられた映像の動きや輪郭の拡大や縮小が第一次の視覚野で抽出され,運動認知の中枢はそれらの情報を総合して三次元の動きという特徴をとり出すのである。
このような特徴抽出機能は単一の視覚細胞の属性として備わっているのでなく,いくつかの神経細胞がシナプスを介して互いに結合し神経回路をつくることから生まれる。コンピューターの計算素子であるトランジスターそれ自身が計算能力をもつのでなく,いくつかのトランジスターが回路をつくることによって計算能力が生じるのと同じである。そこで視覚野には互いに似かよった特徴抽出機能をもつ細胞が柱状に連なって配列されている。互いに似た働きをもつ細胞が近くにあれば,回路を形成するのに便利だからである。
これらの神経回路は生得的なものではない。生後のある時期(ヒトでは2~6歳まで)に形成される。生まれたての動物の視覚細胞を調べると,成長した動物で見られるような反応選択性がまったくない。この時期の視覚細胞はすべてのものに無差別に反応する。また,この時期に両目を縫い合わせて視覚体験を奪われた動物は,その後,目をあけても視覚は永久に回復することなく,視覚細胞の反応選択性はほとんど失われている。このことから生後しばらくの間は,神経細胞をつなぐシナプスが変わりやすく(可塑的),そのときに見たものに対して最もよく反応するように,シナプスのつながりが変わる,つまり視覚体験を学習することによって,反応選択性が後天的に獲得されると考えられる。
われわれの脳にはそれぞれの視覚認知に特有の神経細胞があり,それが活動したときにそれに対応するものが外の世界に存在すると判断する。神経細胞の活動という脳の内なる世界のできごとを通して,外の視覚世界をうかがい知るのである。この内なる世界は生まれつき存在するのではなく,生後のある期間の視覚体験によって形成される。すなわち,後天的に獲得された内なる世界を通して外の世界が認知されるのである。
→感覚 →目
執筆者:外山 敬介
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可視光線の刺激によっておこる感覚をいい、これによって外界の事物や現象が認知される。視覚は聴覚、味覚、嗅覚(きゅうかく)などとともに特殊感覚の一つとされる。
[市岡正道]
視覚の受容器細胞は眼球の内面を覆っている網膜にあり、網膜中の視細胞(錐状体(すいじょうたい)と桿状体(かんじょうたい))によって光の刺激を感受する。このため、他の眼球を構成する組織は、物体の像を正しく網膜に結ばせるための通光学的装置といえる。光線を屈折させる装置を外側からあげると、涙液、角膜、前眼房水、水晶体、および硝子体(しょうしたい)の五つがある。このうち水晶体の屈折率がもっとも大きく、光の屈折はおもに水晶体を通して行われている。正常眼では、眼前約6メートル以上の距離にある物体は屈折させることなく網膜上に正しく結像するが、これより手前にある物体は網膜の後方に像を結ぶため、屈折力を増加させなくては正しく結像しない。このように、近い物を明視する(はっきりと見る)ために目の屈折力を増すことを「目の遠近順応」という。無順応眼(遠近順応を行わない目)で明視できるもっとも遠くにある点を遠点、最大に遠近順応を行った目で明視できるもっとも近くにある点を近点という。近点以内の物体は明視できない。
屈折力の増大は水晶体を厚くすること(とくにその前面の彎曲(わんきょく)度を増すこと)によってもたらされるが、年齢とともに水晶体が硬化して肥厚しにくくなると、遠近順応力もそれに伴って減退してくる。したがって、近点は年齢とともに遠ざかることになる。たとえば、20歳の近点は眼前約10センチメートルであるが、40歳では約20センチメートル、60歳では約80センチメートルに遠ざかる。このように40歳代以降になって近点が遠ざかることを老視(老眼)という。また、眼球の前後軸が正常より長い目では、平行光線が網膜より前方で結像する。これを近視(近眼)といい、凹レンズで矯正する。これに対して、眼球の前後軸が正常より短すぎる目では網膜より後方で結像する。これを遠視といい、凸レンズで矯正する。また角膜の曲率が一様でない場合には屈折度も異なるため、角膜のある経線上の光線と別の経線上の光線は別々の深さで結像し、像はぼやけて見える。これを乱視という。
[市岡正道]
物体の像を結ぶ網膜は10層の細胞層からなり、視細胞である桿状体(桿体)と錐状体(錐体)とは最外層に位置している。桿状体は網膜の周辺部に多く分布し、光に対する感受性が高く、暗い所で明暗の差を感知できる。錐状体は網膜の中心部に多く分布し、光に対して閾値(いきち)(感覚をおこすに有効な最小値)が高く、明るい所で色を感知する。両者にはそれぞれ特有の感光性色素が含まれており、光が当たると化学変化をおこす。これが「視細胞の興奮」である。
この両視細胞は、双極細胞を介して神経細胞に連なっている。神経細胞の軸索(神経細胞より出る長い突起)は眼球を出ると視神経となり、視神経交叉(こうさ)を経て視索に続き、外側膝状体(しつじょうたい)に達する。視神経交叉では、両眼の網膜の左半分に由来する視神経線維は左側の、右半分に由来する視神経線維は右側の膝状体に達している。外側膝状体から発する視神経線維は視放線となり、同側の後頭葉の視覚領に終わる。視神経の軸索の枝は視索から離れて上丘に達し、視覚に基づくいろいろな反射(たとえば瞳孔(どうこう)反射や眼球運動反射など)を行っている。
なお網膜は、細動脈が直接観察できる身体唯一の場所である。このため、糖尿病、高血圧、その他の血管の疾患の診断や病状判定には、検眼鏡による網膜の細動脈観察が重要な意味をもっている。
[市岡正道]
視覚には、光の量の多少によって生ずる明暗感覚と、光の波長の差に基づく色覚の二つがある。明暗感覚は外界の明るさによって変化するものであり、たとえば明るい所から暗い所へ入ると初めは物が見えないが、しだいに網膜の光に対する感受性が高まり、10~20分もすると物が見えるようになる。これを暗順応という。これに対して、暗い所から明るい所に出ると初めはまぶしくて物が見えないが、やがて網膜の光に対する閾値が高まってきて、目はその明るさに慣れてくる。これを明順応といい、明順応には約3分間を要する。暗順応は最初は網膜中心部にある錐状体を介して行われるが、この順応は軽度であり、これに続く網膜周辺部の桿状体における暗順応のほうが強く、長続きする。
明るさの感覚(明度)は、光の波長、すなわち色(色相)によっても異なる。明るい所では黄(550ナノメートル付近)がもっとも明るく見え、スペクトルの長短両端へ向かうにつれて暗く見える。しかし光度を弱めていくと、もっとも明るく見える部位が黄から青緑(510ナノメートル付近)に移る。これを「プルキンエ現象」Purkinje phenomenonといい、1825年に発見された。夕暮れや明け方といった薄暗いときに緑や青が明るく際だって見えるのは、この現象のよい例である。
[市岡正道]
まっすぐ前方を向いていて目に見える範囲を視野といい、眼球を動かして見える範囲を注視野という。視力は、それぞれある大きさ、あるいはある広がりをもった2光体を2光体として分離識別できる最小視角の逆数をもって表される。実際には、6メートルの距離からの最小視角が1分(ぷん)のときを視力1としている。このときの2光体の網膜内の像の隔たりは約4マイクロメートルで、これは錐状体1個の幅にほぼ匹敵する。視力は複雑な要因で決められるものであって、光の照射方法、光の明るさ、光と背景との対比などのほか、眼球での結像の仕方、錐状体の性状などによっても影響される。
繰り返し与えられる点滅光刺激が一つ一つの光刺激として感じられる最大点滅頻度を臨界融合頻度、またはフリッカー値という。中等度の明るさの光刺激のときのフリッカー値は毎秒35~70である。フリッカー値は、二つの色光の明るさの比較や疲労度の測定などに応用されている。
物体の奥行を知覚することは、単眼でも両眼でも可能である。単眼視の場合は、遠近に対する遠近順応の努力の差や視差(目または物体が移動することにより網膜上の像が移動すること)によって奥行が知覚される。また経験によって物体の大きさや形などを知っている場合には、陰影のでき方などによって奥行が知覚される。両眼視の場合は、主として輻輳(ふくそう)度(両眼注視線が見ようとする一点に集合する度合い)と両眼視差(両眼網膜像の差)によって知覚されるが、単眼視の場合に比べれば一段と精密である。
[市岡正道]
ヒトに限らず、動物一般についても、光によって生ずる感覚を視覚という。通常は、広義の光感覚と区別し、特定の光受容器である目の働きによる感覚をさすが、光感覚と同義に用いられることも多い。視細胞に光が当たると、細胞に含まれる感光色素タンパク質(視物質)の光化学作用によって視細胞に電気的な応答が引き起こされる。脊椎(せきつい)動物の視細胞では、網膜の桿状体細胞と錐状体細胞に生ずる変化は、膜を横切って流れるナトリウム電流の低下による過分極であるが、無脊椎動物における変化は脱分極である。視覚は主として目の構造に応じて発達し、明暗、光のくる方向、物体の動き、形や遠近などが識別されるようになる。また異なる波長の光を吸収する視物質の組合せによって波長の差が識別される。脊椎動物や棘皮(きょくひ)動物の視細胞は、繊毛軸糸をもった繊毛型であるが、節足動物や軟体動物の視細胞は、微絨毛(びじゅうもう)の配列する感桿型である。節足動物では多くの個眼が集合した複眼をもつが、軟体動物と脊椎動物は発達したカメラ眼による形態視を行う。
[村上 彰]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…このような意味での今日の光学は物理学の一分科にすぎないが,少なくとも17世紀までは,科学者ばかりか,哲学者や神学者さえもこの学問に取り組んだ。しかも,光学の名のもとに,反射や屈折だけではなく,視覚の問題や,場合によっては眼球の解剖学と生理学すら論じられたのである。 まず,古代には,数学者として知られるユークリッド(エウクレイデス)が光の直進性と反射を研究し,哲学者のアリストテレスも色彩の問題を論じた。…
…とりわけ外部刺激が脳に作用して世界風景が見え聞こえるという生理学公認の事実の再解釈が必要である。視覚を例にとる。まず視覚の風景が〈見透し〉構造をもつことに留意する。…
…ケーラーは,あらゆる知覚現象には必ずそれに対応する脳の生理的過程があるという心理物理同型論psychophysical isomorphismの立場から,仮現運動が実際の運動と等しい生理過程を大脳皮質にひき起こすのであろうと考えた。最近の神経生理学的研究によると,実際にネコやサルの視覚野とその周辺で記録される運動感受性細胞は,連続的な運動だけでなく仮現運動にもよく反応する。したがって今日では,知覚は受容器でとらえた感覚信号の空間的・時間的パターンから,中枢神経系で何段階かの情報処理を経て読み取られた,あるまとまった意味のある情報であると理解されている。…
…上丘はその構造に対応していろいろの機能を行っている。最も重要なものは視覚に関係するものである。上丘は,大脳の後頭葉にある後頭眼野や前頭葉にある前頭眼野などの目の動き(眼球運動)をコントロールしている部分から司令を受けている。…
※「視覚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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