改訂新版 世界大百科事典 「フランカステル」の意味・わかりやすい解説
フランカステル
Pierre Francastel
生没年:1900-70
フランスの美術史家。パリに生まれ,文学と美術史文献学を学ぶ。ベルサイユ宮殿の彫刻群についての博士論文を提出し,ワルシャワで5年間教鞭をとった後,1936年からストラスブール大学教授,48年からパリの高等研究学院で芸術社会学の講座を開く。フランカステルは美術の解釈に,いわゆる歴史的事実の羅列を排して,美学と社会学とを導入しようとする。すなわち〈造型言語〉という芸術表現の基本的エレメントは,言語とはまた異なった独立の単位として人間の文化的活動の基礎となっており,このような,書かれたものでないエレメントを,ある時代と社会の精神活動のあらわれとして解釈しようとする。このようにして,《絵画と社会》(1951)においてはルネサンスと19世紀末に空間認識のうえで激しい変化があったと説き,《19,20世紀の芸術と技術》(1956)では,その後の新たな時代を分析する。ほかに《形象の現存,芸術社会学の構成的要素》(1965),《形象と場--クアトロチェントの視覚秩序》(1967),《印象主義》,妻ガリエンヌGalienneとの共著で《肖像画,絵画におけるユマニスムの5000年》(1969)などがある。
執筆者:馬渕 明子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報