改訂新版 世界大百科事典 「ブレホン法」の意味・わかりやすい解説
ブレホン法 (ブレホンほう)
Brehon Laws
古代アイルランド人の諸権利および慣習をまとめた法律の総称。当時の専門の法律家階級がブレホンと呼ばれていたことからこの名がある。最初に文字で記されたのは550年から600年のころで,740年ころに集大成された。現存する写本は15世紀のものであるが,古代アイルランド語で書かれており,7~8世紀アイルランド社会を知るうえでも貴重な文献となっている。この法に定められていた男子均分相続土地所有(ガベルカインドgavelkind)の慣習は1606年に裁判で違法とされ,また,同法による族長後継者を族長在世中にその親族から選挙する制度(タニストリーtanistry)も1608年にイギリスの王座裁判所で違法と判決された。同法の全容は,ブレホン法委員会編《アイルランド古代法》5巻(1865-1901)で明らかにされた。
執筆者:上野 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報