改訂新版 世界大百科事典 「プリニウス小」の意味・わかりやすい解説
プリニウス[小]
Gaius Plinius Caecilius Secundus
生没年:61ころ-113ころ
ローマ帝政期の政治家,弁論家,著作家。コムムの地方貴族の家に生まれ,のちに叔父プリニウス(大)の養子となった。護民官や各種財務官職を経て100年にはコンスル(執政官)をつとめた。その後111年に属州ビテュニアに知事(レガトゥス)として赴任し,113年ころその地で死んだものと思われる。これらの官職を歴任している間に,弁護士として法廷に立ち,いくつかの重要な事件に関与した。また,大土地所有者として,所領の経営にも心をくだいた。彼の《書簡集》全10巻は,それらの公的・私的なできごとを詳細・具体的に記しており,帝政初期のローマの,政治・法制・社会・経済・文化を知るうえで重要な資料となっている。また彼が100年にコンスルとしておこなった皇帝トラヤヌスへの賛美演説(《頌詞》)は,当時の修辞学の技法の実例を示すとともに,ローマの皇帝観の推移をたどるうえでも貴重である。
執筆者:坂口 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報