ペオン(英語表記)peón[スペイン]

改訂新版 世界大百科事典 「ペオン」の意味・わかりやすい解説

ペオン
peón[スペイン]

一般的にはラテン・アメリカにおける農業労働者を指すが,狭義ではアシエンダに対して債務を負う債務ペオンpeón endeudadoを意味する。アシエンダは労働者に前貸しおよび直営売店の掛売りを行い,その債務累積によって労働力を確保した。とくにメキシコではペオンは独立以降,メキシコ革命前夜までのアシエンダにおける労働力のほとんどすべてであった。メキシコ革命のとき彼らが主力部隊となった。ペオンはアシエンダ内に小片の土地を貸与される定住ペオンと臨時雇いペオンに大別される。後者はアシエンダ付属の小作農,隣接の小農・共同体農民などからなり,収穫期間だけわずかな賃金食糧の支払を受けた。19世紀後半のペルーにおいても,沿岸部の商品農業(とくに糖業)の発展に伴い,前貸しによる労働契約制度が一般化した。これは山岳部地方の原住民共同体からの集団的な労働力の徴集であり,エンガンチェ制engancheと呼ばれており,このアシエンダにおける農業労働者もペオンと呼称されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のペオンの言及

【アシエンダ】より

… アシエンダの経営は小作地と地主直営地に大別される。前者はさらに地代形態により雇役小作(小作農の名称――コロノ,インキリノ,ワシプンゲーロ),分益小作(ヤナコナ,アパルセロ,メディエロ),賃小作(アレンダタリオ)に区別され,直営地においては農業労働者(ガニャン,ペオン,アフエリノ,ボルンタリオ)が低賃金労働を行う。アシエンダの構成員は,19世紀中葉のメキシコの例でみると,地主の代理である支配人,司祭,管理人,正書記,経理士などのエリート層,人夫頭,書記,教師,番人などの中間職,ペオン,下働き人夫などの農場労働者である。…

【ラテン・アメリカ】より

…アシエンダは17世紀末には自給自足しうる大規模な経済・社会単位となり,しばしば近隣のインディオの村をも包みこんだ。こうしてかつてはその土地の所有者であったインディオが,実質的には農奴のような存在(ペオン)となってアシエンダで暮らすようになった。植民地社会の封建的側面を最も顕著に示したアシエンダは現在も暗い影を落としている。…

※「ペオン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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