化学辞典 第2版 「ホウ酸エステル」の解説
ホウ酸エステル
ホウサンエステル
boric acid ester
一般式B(OR)3(Rはアルキル,アリル).ボランBH3の水素置換体としてトリアルコキシボランのようによぶこともある.硫酸共存下でホウ酸とアルコールを反応させるか,KOH存在下でB2O3またはBCl3とアルコールを反応させるなどで合成する.低級アルコールのエステル,たとえば,B(OCH3)3は融点-29 ℃,沸点69 ℃.B(OC2H5)3は融点-85 ℃,沸点117 ℃ の液体.前者は緑色の炎をあげて燃えるため,Bの定性的検出反応に用いられる.容易に加水分解する.また,アルコールと反応して,H[B(OC2H5)4]などを生じる.多価アルコール(たとえば,マンニトール,グリセリンなど)とは,図のようなキレート錯体をつくる.これらはホウ酸よりずっと強い酸で,アルカリ滴定できる.
トリメチルエステルは,樹脂,油などの溶剤,ケトン製造時の触媒,中性子検出器用計数管の気体などに,トリエチルエステルは,防腐,防火処理用の溶剤,消毒用などに,トリブチルエステルは,繊維難燃化剤,溶接用フラックスなどに用いられる.トリメチルホウ酸は,「ほう酸及びその化合物」として化学物質排出把握管理促進法・第一種指定物質.[CAS 121-43-7:トリメチルホウ酸][CAS 150-46-9:トリエチルホウ酸]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報