エステル(読み)えすてる(その他表記)ester

翻訳|ester

デジタル大辞泉 「エステル」の意味・読み・例文・類語

エステル(ester)

酸とアルコールとから、水を分離し縮合して生成する化合物の総称。酢酸エチルアルコールとから得られる酢酸エチルなど。

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精選版 日本国語大辞典 「エステル」の意味・読み・例文・類語

エステル

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Ester ) 酸にアルコールまたはフェノールを作用させ、水を分離してできる化合物の総称。人工の果物エッセンスに利用。天然にはカルボン酸とアルコールのエステルとして、植物油、ろう、脂肪などに含まれる。〔稿本化学語彙(1900)〕

エステル

  1. ( Esther ) 「旧約聖書‐エステル書」の主人公。ユダヤ人の娘で、ペルシア王クセルクセス一世の王妃となり、大臣ハマンのユダヤ人殺害の計画を失敗に終わらせた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エステル」の意味・わかりやすい解説

エステル
えすてる
ester

有機酸または無機酸とアルコール(またはフェノール)が1分子の水を失って縮合した形の化合物の総称。エステルは、母体となる酸の名前を前にして、アルコールのヒドロキシ基を取り除いた部分のアルキル基名をそれに続けて記すことにより命名される。たとえばCH3COOC2H5は酢酸+エチル(基)で「酢酸エチル」、PO(OCH2CH2CH2CH3)3はリン酸+三つ(トリ)のブチル(基)で「リン酸トリメチル」と命名する。エステルは表1のように酸の種類によって分類することができるほか、アルコールのエステルかフェノールのエステルかによっても区別される。したがってエステルの種類は非常に多い。なお塩酸HClや臭化水素酸HBrのエステルにあたる化合物はハロゲン化アルキル(RX。Xはハロゲン、すなわちフッ素F、塩素Cl、臭素Br、ヨウ素I)とよばれていて、普通はエステルには含めない。単にエステルという場合には、狭い意味でカルボキシ基カルボキシル基)-COOHをもつ有機化合物であるカルボン酸のエステルのみをさす場合が多い。

 また、酸が多塩基酸である場合には、酸性水素の一部だけがエステルになった酸性エステルと、すべての酸性水素がエステルになった中性エステルとがある。


[廣田 穰・末沢裕子]

カルボン酸エステル

カルボン酸のカルボキシ基とアルコールまたはフェノールのヒドロキシ基-OHが1分子の水を失って縮合した形の化合物である。

 アルコールのエステルは、カルボン酸とアルコールを硫酸などの強酸の存在下において脱水縮合させてつくることができる。たとえば、酢酸エチルは酢酸とエタノール(エチルアルコール)から次の反応でつくることができる。


 カルボン酸やアルコールは天然にはエステルの形で存在する場合が多い。比較的分子量が小さい炭素数の少ない低級カルボン酸エステルは、一般に芳香をもっていて植物の精油中の芳香成分として知られている。また高級脂肪酸のグリセリンエステルは油脂や脂肪の成分として広く動植物体内に含まれていて、グリセリドとよばれている。

[廣田 穰・末沢裕子]

製法

エステルを合成する反応をエステル化とよんでいる。普通のアルコールとカルボン酸からエステルをつくるには、カルボン酸の量に比べてかなり多い量のアルコールをカルボン酸と混ぜて、これに少量の硫酸を加えるか、または塩化水素を吹き込み加熱する。フェノールのエステルは、カルボン酸とフェノールの反応では得られず、カルボン酸無水物またはカルボン酸塩化物とフェノールとを反応させると得られる。

[廣田 穰・末沢裕子]

性質

中性エステルは、一般に芳香のある液体で、炭素数の少ない低級のものは揮発性が大きい。水には溶けにくいが、アルコール、アセトンなどの有機溶媒によく溶ける。炭素数の多い高級カルボン酸や高級アルコールのエステルは固体である。エステルの沸点は、カルボン酸部分が同じであればアルコールのアルキル鎖が長くなるにしたがって高くなり、アルコール部分が同じであればカルボン酸の鎖が長くなるにしたがって高くなる。

 エステルの反応としてもっとも重要なのは加水分解である。この反応はエステル化の逆反応で、エステルからカルボン酸とアルコールとを生成する。エステル化と同じように硫酸、塩酸などの強酸を触媒としても進行するが、水酸化ナトリウムなどの塩基を反応させるほうが反応は速く進む。


 水酸化ナトリウム水溶液での加水分解では、カルボン酸のナトリウム塩ができるので、カルボン酸を得るには塩酸などを加えて酸性にする。


 さらにエステルとアンモニアとの反応によりアミドを生成するアンモノリシス反応も知られている。

 エステルは水素化アルミニウムリチウム、金属ナトリウムとアルコール、銅‐酸化クロム触媒を用いた水素化により、アシル基RCO-部分が第一アルコールRCH2OHに還元される。Rは炭化水素基である。この反応の例を示すと、次のようになる。


 ここまで主として一塩基酸(モノカルボン酸)と一価アルコールのエステルについて述べてきたが、多塩基酸や多価アルコールのエステルも数多く知られている。これらのうちで、三価アルコールであるグリセリン(グリセロール)と高級脂肪酸のエステルは脂肪および油脂の成分として広く動植物界に分布しているので重要である。また「テトロン」などの商標名で市販されている合成繊維も、二塩基酸であるテレフタル酸と二価アルコールであるエチレングリコールがエステルとなって鎖状に連なった構造で、ポリエステル繊維とよばれている。

 分子内にアルコールのヒドロキシ基とカルボキシ基の両方をもつヒドロキシ酸では、両方の置換基が適当な位置にあると、分子内でエステル化をおこして環状のエステルをつくる。このような分子内環状エステルをラクトンという。ラクトンはヒドロキシ基がカルボキシ基の炭素から数えて4番目の炭素上にあるカルボン酸の場合にもっとも生成しやすい。

[廣田 穰・末沢裕子]

用途

工業上での用途をもつエステルとしては、先に述べた油脂のほかに香料として食品、化粧品、せっけんなどに添加されているエステル、さらにはポリエステル繊維、ポリエステル樹脂がある。このほかに合成樹脂の原料となる酢酸ビニル、メタクリル酸メチルなどの単量体、可塑剤となるフタル酸エステル、溶剤として使われる酢酸エチル、酢酸アミルなどの低級エステルをあげることができる。

[廣田 穰・末沢裕子]

風味

エステルの一部は香料として加工食品や菓子作りに用いられる。また、天然にはバナナ、リンゴなど多くの果物の芳香成分として存在し、風味の大きな役目をもつ。しょうゆ、酒などの醸造品にも芳香成分として含まれ、料理の風味づけに役だつ。エステルは蒸発しやすく、加熱調理の際、蒸発し、香りが失われやすい(表2)。

[河野友美・山口米子]

無機酸エステル

「エステル」という用語は、狭い意味ではカルボン酸エステルをさすことが多いが、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸もアルコールやフェノールとエステルをつくる。これらの無機酸のエステルは、カルボン酸エステルなどの有機酸エステルに対して、無機酸エステルと総称される。

(1)硫酸エステル 硫酸H2SO4とアルコールとのエステルであり、硫酸の水素原子をアルキル基(一般式CnH2n+1)で置き換えた構造をもっている。硫酸は二塩基酸であるので、水素が一つだけアルキル基で置換され、まだ酸性の水素が残っている酸性エステルRSO4Hと、水素が2原子ともアルキル基で置換された中性エステルR2SO4とがある。

 中性エステルである硫酸ジアルキルは硫酸とアルコールとの反応では少量しか生成しない。


したがって、硫酸エステルを合成するには塩化スルフリルSO2Cl2ナトリウムアルコキシド(たとえばC2H5ONa)との反応を用いるほうがよい。工業的には、硫酸をアルケンに付加させてつくっている。


硫酸ジメチルは(CH3)2SO4の式で表される無色の重い液体で、メチル化剤として重要である。この化合物はきわめて有毒であり、皮膚につけると壊死(えし)をおこし、死に至ることがある。

 硫酸ジエチル(C2H5)2SO4は硫酸ジメチルに似た無色の液体で、エチル化剤として用いられている。硫酸にエタノールまたはエチレンを溶かすと、液が冷たい場合には、溶かしたエタノールの大部分が酸性エステルの硫酸水素エチル(エチル硫酸ともいう、化学式はHOSO2OC2H5)として存在する。これを加熱して140℃ぐらいの温度にすると、脱水反応がおこってジエチルエーテルC2H5OC2H5を生成し、温度を160℃以上に上げると、さらに脱水が進んでエチレンを生成する。硫酸水素エチルなどの酸性硫酸エステルもアルキル化剤としての作用をもつが、これらを純粋に分け取るのはむずかしい。

(2)リン酸エステル リン酸H3PO4とアルコールとのエステルであり、硫酸の場合と同じように酸の水素が残っている酸性エステルと酸の水素がすべてアルキル基になった中性エステルとがある(リン酸は三塩基酸)。糖のリン酸エステルは生物学的にも重要であり、糖の代謝や多糖類の生合成に関与している。RNA(リボ核酸)やDNA(デオキシリボ核酸)はリボースやデオキシリボースのリン酸エステルが核酸塩基と結合した化学構造をもっている。とくに、核酸塩基アデニンと糖とリン酸が結合しているアデノシン三リン酸(ATP)はエネルギーが高く活性なリン酸エステル結合をもっていて、動物の筋肉収縮など生物体内のエネルギー源となっている。

 工業的に重要なリン酸エステルとしてリン酸トリブチル[CH3(CH2)3O]3PO(略称TBP)とリン酸トリクレシル(CH3C6H4O)3PO(略称TCP)をあげることができる。リン酸トリブチルはナトリウムブトキシドと塩化ホスホリルPOCl3との反応によりつくられ核燃料ウランの精製や核燃料処理の際の抽出溶媒としての用途をもっている。沸点289℃の無色の液体であり、水には溶けにくいが有機溶媒には溶ける。リン酸トリクレシルはポリ塩化ビニルなどの可塑剤として使われている。

 リン酸およびチオリン酸エステルには「有機リン殺虫剤」とよばれて農薬として使われていたものも多かったが、毒性が大きいため、その一部は使用禁止になっている。

(3)硝酸エステル 硝酸HNO3とアルコールのエステルであり、硝酸とアルコールとから1分子の水がとれて縮合して生成する。


 加熱したり衝撃を与えたりすると爆発をおこすものが多く、とくに多価アルコールであるグリコール、グリセリン、セルロースなどの硝酸エステルは爆発力が強いので爆薬として用いられている。

 硝酸メチルCH3ONO2は無色の液体で、爆薬やロケット用燃料としてドイツで使われたが、蒸気圧が高い欠点がある。硝酸エチルは沸点87.5~87.7℃の液体で硝酸メチルと同様に爆発性が強い。

(4)そのほかのエステル これまで述べたもの以外にも取り上げるべき重要な化合物が二、三ある。その一つは炭酸エステルである。炭酸O=C(OH)2は二塩基酸であるが、酸性エステルROC(O)OHは不安定で存在せず、中性エステルO=C(OR)2(Rは炭化水素基)だけが実在する。炭酸エステルで重要なものは、炭酸エチレンCO(OCH2)2で高分子化合物の溶剤や実験室で炭酸エステルをつくる原料としての用途をもっている。また、炭酸グアヤコールは白色の結晶で殺菌剤、去痰(きょたん)剤として医薬の用途をもっている。

 また、カルバミン酸H2NCOOHのエステルであるカルバミン酸エステルH2NCOORは、別名ウレタンとよばれ、エチルエステル(カルバミン酸エチルH2NCO2CH3CH2)は催眠作用がある。合成繊維や合成ゴムなどに使われるポリウレタンは置換カルバミン酸エステル構造が鎖状に連なって高分子になっている。


 さらに亜硝酸HNO2のエステルはR-O-N=Oの一般式で表され、ニトロ化合物

の異性体である。亜硝酸エチルCH3CH2ONOはエタノールに亜硝酸ナトリウム水溶液と硫酸とを反応させると得られる黄色の液体で血管拡張薬として用いられる。亜硝酸イソアミル(CH3)2CHCH2CH2ONOも同様の方法で合成できる淡黄色の液体で、やはり血管拡張薬として狭心症などに用いられるほか、ニトロソ化合物やオキシムを合成する際のニトロソ化剤としての用途をもつ。

[廣田 穰・末沢裕子]

『小竹無二雄監修『大有機化学4 脂肪族化合物3』(1959・朝倉書店)』


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改訂新版 世界大百科事典 「エステル」の意味・わかりやすい解説

エステル
ester

アルコールやフェノールが有機酸および無機酸と脱水縮合してできる化合物の総称で,その構成成分によって分類される。

 1848年にドイツの化学者L.グメリンが酢酸エチルのことをEssigäther(Essig(酢)+Äther)と名づけたのがエステルの名のはじまりである。二塩基酸以上の酸のエステルには中性エステルと酸性エステルが存在する。たとえば,硫酸のエステルにR2SO4(中性)とROSO3H(酸性)の2種類がある。

 カルボン酸エステルはアルコキシカルボニル基-COORをもつ。命名は,酸の名称の後にアルコールのアルキル基名を続ける。たとえばCH3CH2COOC2H5は,プロピオン酸とエチルアルコールから生成するから,プロピオン酸エチルと呼ぶ。カルボキシル基-COOHと水酸基-OHが同一分子内にあるカルボン酸から生成し,分子内で環状エステルをつくっているものをラクトンといい,環の大きさにより,β-ラクトン(4員環),γ-ラクトン(5員環)などという。カルボン酸エステルは,天然には動植物体内に脂肪およびの形で蓄えられている。脂肪は高級脂肪酸とグリセリンのエステルであり,蠟は高級脂肪酸と高級一価アルコールとのエステルである。低級脂肪酸と低級アルコールとのエステルで植物の精油中に含まれるものも多い。

カルボン酸エステルは,それを構成するカルボン酸やアルコールの炭素数が小さいものは芳香のある液体であるが,炭素数が大きくなるにつれて粘重な液体から固体となる。一般に水に難溶で,有機溶媒に溶けやすい。酸またはアルカリ触媒で加水分解すると相当するカルボン酸とアルコールを生成する。とくに,油脂や蠟を水酸化アルカリで加水分解しセッケンにする反応をケン(鹼)化という。

カルボン酸エステルの製法としては,(1)硫酸や塩化水素の触媒下にカルボン酸とアルコールまたはフェノールを縮合させる方法(フィッシャー法)や,カルボン酸とアルコールの混合物を300℃に加熱した酸化トリウムThO2触媒上を通過させる方法は工業的にも用いられ,最も一般的であるが,ほかにも実験室で用いられる方法としては下記のものがよく知られている。

(2)酸塩化物または酸無水物にアルコールを作用させる。

(3)カルボン酸にジアゾメタンを作用させる。この方法は貴重なカルボン酸のメチルエステルを合成する方法としてよく用いられている。

(4)カルボン酸銀にハロゲン化アルキルを作用させる。

 RCOOAg+R′X─→RCOOR′+AgX

(5)エステル交換反応。目的とするエステルと同じカルボン酸またはアルコール部分のいずれかを含み入手しやすいエステルを原料として用い,もう一方の必要なカルボン酸またはアルコールを過剰に加えて水酸化ナトリウムなどの触媒の存在下に加熱し,目的エステルを得る方法(エステル交換)。

(6)酢酸第二水銀を触媒としてアセチレンに酢酸を付加する。この方法は合成高分子の原料である酢酸ビニルの製造に用いられる。

(7)ジカルボン酸モノエステル(酸性エステル)の合成は,いったん相当するジエステル(中性エステル)を合成した後,これを等モルの水酸化ナトリウム等で加水分解して合成する。

 ROOC………COOR+H2O─→ROOC………COOH+ROH

これらのカルボン酸エステルは種々の有機合成の原料として用いられるだけではなく,酢酸エチルなどの低分子量エステルは塗料やプラスチック,ゴムなどの溶剤として用いられる。また,カルボン酸エステルには果実に似た芳香をもつものが多く,着香料として食品等に添加される。たとえば,酢酸イソアミル(CH32CHCH2CH2COOCH3はバナナ,酪酸エチルCH3CH2CH2COOC2H5はパイナップルの香りをもつ。ジカルボン酸のジエステル(中性エステル)は可塑剤として用いられる。

 無機酸エステルのうち,硫酸ジメチル(CH32SO4は重要なメチル化剤としてよく用いられているが,有毒な液体(沸点187.5℃)であるので取扱いに注意が必要である。これはヨウ化メチルと硫酸銀とを高温で反応させて製造する。ダイナマイトの基剤としてよく知られているニトログリセリンはグリセリンの硝酸エステルで,正しくは三硝酸グリセリンと呼ばれ,グリセリンを冷却した1:1混酸(硫酸+硝酸)中に滴下して得られる。亜硝酸アミルC5H11ONOは快香をもつ液体(沸点96℃)で,血管を拡張する作用があるため狭心症の治療薬として用いられる。リン酸のエステルであるリン酸トリエチルは無色の液体(沸点216~217℃)で,ニトロセルロースや酢酸セルロースの溶剤として用いられたり,ゴムや合成樹脂の可塑剤として用いられる。また,リン酸エステルは生体内で多く見いだされ,生命現象に重要な役割を果たしている。
酢酸エステル →炭酸エステル →硫酸エステル
執筆者:



エステル
Esther

旧約聖書の中の5巻(メギロート)に属する歴史小説《エステル記Book of Esther》の女主人公。物語のできごとはペルシア王クセルクセスのスーサの宮廷で起こった。ユダヤ人であるモルデカイの養女エステルは,その美しさのゆえに王妃ワシテに代わって王妃とされる。一方モルデカイは大臣ハマンに対して敬礼を拒否し,これを怒ったハマンはユダヤ人を迫害する詔勅を獲得する。その日付はくじ(プル)によってアダルの月(太陽暦の2~3月)の13日と決まる。エステルとモルデカイ,全ユダヤ人の嘆きは大きい。しかしエステルの決死の勇気ととりなしでこの命令を取り消すことに成功する。またモルデカイは王の暗殺を未然に防いで面目を施し,ハマンは絞首台につるされ,かえってモルデカイは高い地位につく。さらに,エステルの願いによって王はユダヤ人がその敵を滅ぼすことを許し,アダルの月の13日にこの復讐が決行され,そしてこの日が安息と祝いの日として定められた。ユダヤ教の〈プリム祭〉の起源がそれである。
執筆者:

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化学辞典 第2版 「エステル」の解説

エステル
エステル
ester

有機酸または無機オキソ酸とアルコールから水を失って生成したと考えられる化合物の総称.酸の水素原子をアルキル基で置換したものに相当する.二塩基酸以上の酸のエステルには,中性エステルと酸性エステル(たとえば,硫酸エステルのR2SO4とRHSO4)があり,二価以上のアルコールには,ヒドロキシ基がすべてエステル化したものと,一部がアルコールとして残っているもの(たとえば,エチレングリコールのカルボン酸エステルC2H4(OCOR)2と,RCOOC2H4OHがある.単にエステルといえば,カルボン酸エステルをさすことが多い.分子内エステルはラクトンという.カルボン酸やアルコールは,しばしばエステルとして天然に存在する.多くの植物精油成分,ろう,油脂,脂肪などはそれである.エステルは直接に酸とアルコールとの反応によって生成するが,ハロゲン化アルキルと有機酸の塩,酸塩化物とアルコールまたはアルコキシド,カルボン酸とジアゾメタンなどからもつくられる.中性エステルは,一般に芳香のある揮発性の液体で,水に難溶,有機溶媒に易溶であり,人工果実エッセンスとして使用される.高級の酸やアルコールのエステルは固体であり,動物の脂肪や植物油中に存在する.酸性エステルは,一般に難揮発性で,水に溶けて酸性を示し,塩基と塩をつくる.エステルは加水分解によって酸とアルコールを生成し(けん化),アンモニアと反応してアミドを,水素化アルミニウムリチウムで還元すると第一級アルコールを生成する.

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百科事典マイペディア 「エステル」の意味・わかりやすい解説

エステル

酸とアルコールが脱水縮合してできる化合物の総称。酢酸エチルCH3COOC2H5油脂(ろう)などはその例。加水分解すると酸とアルコールになる。一般に低分子のエステルは芳香をもつ液体で人工の果実エッセンスとして用いられる。(図)
→関連項目加水分解酵素カリセッケン(石鹸)ケン(鹸)化脂肪酸

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エステル」の意味・わかりやすい解説

エステル
ester

有機酸または無機酸とアルコールから水がとれてできる形の化合物の総称。低級脂肪酸と低級アルコールのエステルは芳香があり,人工果実エッセンスの原料や有機溶媒に使われる。二塩基酸以上のエステルには,酸のカルボキシル基すべてがエステル化された中性のエステルと,カルボキシル基が1つ以上残っている酸性エステルとがある。高級脂肪酸とグリセリンのエステルは油脂と呼ばれる。エステルを加水分解すると酸とアルコールになる。無機酸のエステルは有機酸エステルと比べて製法,性質が異なる。そのうち硫酸と高級アルコールのエステルは界面活性剤として使われる。

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栄養・生化学辞典 「エステル」の解説

エステル

 酸とアルコールが脱水縮合した化合物の総称.

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世界大百科事典(旧版)内のエステルの言及

【ヘンデル】より

…しかし,この期間ヘンデルはイタリア・オペラの作曲家としてロンドンに不動の地位を築いたのであった。一方,数多くのオペラのほか,1732年以後ヘンデルは《エステル》(1732)や《アタリア》(1733)などの英語によるオラトリオによって徐々に独自のオラトリオを開拓していく。また《アレクサンダーの饗宴》(1736)のようなイギリス文学との直接の関係を示すオラトリオも試みられた。…

※「エステル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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