溶剤(読み)ヨウザイ(その他表記)solvent

翻訳|solvent

デジタル大辞泉 「溶剤」の意味・読み・例文・類語

よう‐ざい【溶剤/溶材】

石油油脂工業などで、物質を溶かすのに用いる液体アルコールなど。溶媒
融剤ゆうざい」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「溶剤」の意味・読み・例文・類語

よう‐ざい【溶剤・溶材】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物質を溶かすのに用いる液体状のもの。溶液の溶媒に相当するが、普通はアルコール・揮発油・ベンジン・エーテルなどの有機溶剤をさす。使用目的により、抽出剤吸収剤洗浄剤展色剤などと呼ばれる場合もある。美術では、絵具・顔料を溶く材料で、油彩画における油、水彩画における水などをいう。
    1. [初出の実例]「然れども用に臨て新に之を製するか、若くは溶剤を用ふるの解析さるることなきに如かず」(出典:七新薬(1862)一)
  3. ゆうざい(融剤)

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改訂新版 世界大百科事典 「溶剤」の意味・わかりやすい解説

溶剤 (ようざい)
solvent

均一液相をなす混合物を構成している成分のうち,液体成分の一つを溶剤または溶媒といい,他の成分を溶質という。また金属工学でも製錬において溶剤が使用されるが,これは通常フラックスと呼ばれている。気体または固体が液体に溶解して均一な溶液をつくる場合には液体を溶剤といい,液体間で溶液をつくる場合には相対的に量の多いほうを溶剤とみなす。

 溶剤は固体または液体の溶解,濃厚液の希釈に用いられるのみならず,化学反応を生起させる反応媒体として用いられる。また,液体および固体の原料から,液液抽出または固液抽出により,有用成分の抽出および不要成分の除去精製を行うさいに用いられる。油脂類,香料成分などの採取,潤滑油,香料などの精製はこの例である。

 溶剤の溶解作用は溶解前後の自由エネルギー変化によって与えられる。溶解が自然に生じるためには,自由エネルギー変化が負でなければならない。自由エネルギー変化は,溶解前における溶剤分子間および溶質分子間の同種分子間相互作用と,溶解後に同種分子間の相互作用が壊れて溶剤と溶質の異種分子間の相互作用が生じることによるエネルギー変化,および溶剤中に溶質が混合し,溶液を形成する場合のより安定な状態を示す確率とによって与えられる。これらは分子間の結合の種類,分子の大きさおよび形などによって異なる。一般に,類似した性質の物質は相互に溶けやすい性質がある。たとえば,炭化水素類は相互に溶けあうが,水にはほとんど溶けない。水はアルコール,有機酸,フェノール類のように水酸基をもつものをよく溶かす。したがって,溶質の溶剤に対する溶解性は相互の組合せにより,一般的には論じられない。系が希薄溶液を形成する場合には,気体の溶解度は〈ヘンリーの法則〉,液体または固体の溶解平衡は分配律により表され,各相の溶質の濃度間に比例関係が存在する。しかし,これらの法則は限られた狭い範囲内でしか適用できないので,溶解度は一般には実測値により求められなければならない。これには図1に示すような実測値から作成した相互溶解度曲線による。この図で閉曲線内は2液相領域,その外側は均一液相領域である。点A,Bは上部および下部臨界濃度といい,それ以上および以下では,全濃度にわたって均一液相となる。また図2はプロピオン酸-トルエン-水系の液液平衡を示す。2液相領域で互いに平衡な2相の濃度がタイラインで結ばれている。これが一点に収斂(しゆうれん)したのがプレート点Pで,均一液相となる。

 液液抽出における溶剤を抽剤といい,これが具備すべき条件として,(1)溶解度が大,(2)選択性が大,(3)回収性がよいなどがあげられる。液相反応において,溶剤は反応速度,平衡関係に大きな効果を及ぼす。これを溶媒効果といい,溶剤の誘電率,イオン強度などに依存する。一般に,溶剤として広く用いられているものの例として,石油軽質留分,アルコール,トルエン,エーテル,アセトン,ハロゲン化炭化水素などがあげられる。
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百科事典マイペディア 「溶剤」の意味・わかりやすい解説

溶剤【ようざい】

(1)物質を溶解するために用いる液体物質。工業的には塗料接着剤,石油,油脂,医薬,香料などの各分野で広く用いられ,その作用に応じて抽出剤,吸収剤,洗浄剤などと呼ばれることもある。よく使用される溶剤としては石油軽質留分,アルコール,ベンゼン,エーテル,アセトン,フルフラール,テレビン油,トリクロロエチレンフロンのような炭化水素のハロゲン置換体などがある。→溶媒(2)融剤。→フラックス
→関連項目産業公害シンナーフーゼル油有機塩素化合物

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶剤」の意味・わかりやすい解説

溶剤
ようざい
solvent

英語やドイツ語では区別しないが、日本では溶媒と溶剤とに区別し、使用する場所、あるいは立場によって使い分けている。溶剤のほうは「物質を溶かすために用いる液体」をさし、主として工学分野での用語である。これ以外の分野では、同じものを溶媒のなかに含めてしまうので、いろいろな事典、解説書類には溶媒、溶剤いずれかしか記述されていないものが少なくないが、これはあまり望ましくない。たとえば、ソルボリシスはやはり「加溶媒分解」であり、「加溶剤分解」とはいわないのが普通である。

[山崎 昶]

『篠田耕三編『合成と溶解のための溶媒』(1969・丸善)』

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化学辞典 第2版 「溶剤」の解説

溶剤
ヨウザイ
solvent

本来は,溶媒と同義で,目的とする物質(溶質)を溶解させるために用いる液体をいう.英語では区別がないが,わが国では,理学的に扱う場合に溶媒,工業的に扱う場合に溶剤の用語が用いられることが多い.アセチルセルロースを溶解させるアセトン,大豆から大豆油を溶解抽出させる工業ガソリンリホーメートからBTX(ベンゼン,トルエン,キシレン)を抽出分離させるスルホランなど,化学工業ではきわめて多くの溶剤が使われる.

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岩石学辞典 「溶剤」の解説

溶剤

融剤

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栄養・生化学辞典 「溶剤」の解説

溶剤

 →溶媒

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「溶剤」の意味・わかりやすい解説

溶剤
ようざい

溶媒」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の溶剤の言及

【溶媒】より

…溶体をつくる媒体,すなわち溶質を溶かすのに用いる成分を溶媒という。液体と,固体または気体とからなる溶液では,液体成分を溶媒という。液体と液体の溶液,固体と固体の溶体がつくられる場合は,多量に存在するほうを溶媒とみなす。普通は液体をさしていうことが多い。最も多くの物質を溶かしうる溶媒は水である。ほかにはメチルアルコール,エチルアルコールなどのアルコール類,ベンゼン,ベンジンなどの有機物が溶媒として用いられている。…

【フラックス】より

…溶剤,融剤,または媒溶剤とも呼ばれる。おもに,酸化物,塩化物,フッ化物からなる物質で,鉱石を製錬する際に用いられる。…

※「溶剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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