改訂新版 世界大百科事典 「ホータンサカ語」の意味・わかりやすい解説
ホータン・サカ語 (ホータンサカご)
Khotan-Saka
紀元前より西北インド,アフガニスタンで栄えたサカ族の言語と関係づけられる中央アジア・サカ語のうち,ホータン出土文献の言語をいう。この言語はインド・ヨーロッパ語族のイラン語派(中世イラン語)に属し,ホータン語あるいは于闐(うてん)(ホータンの漢名)語ともいう。ホータン・サカ語文献はだいたい10世紀中葉までに書かれたと考えられている。文献の多くは仏典類であるが,知られるものはすべて大乗に属する。これらのうち《ザンバスタZambastaの書》と呼ばれる仏教詩偈集は古い言語形式を保存しており,最も重要な仏典といわれている。中央アジア・サカ語には,ほかにトゥムシュクやムルトゥク,マルラバシで発見された文献の言語がある。量は多くはないが,これらの文献言語はトゥムシュク・サカ語とも呼ばれ,ホータン・サカ語よりは古い言語特徴を保存している。この言語をホータン・サカ語の古形と考えて,ホータン・サカ語の名称に統合されることもある。
執筆者:庄垣内 正弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報