改訂新版 世界大百科事典 「ボリスとグレープ」の意味・わかりやすい解説
ボリスとグレープ
Boris i Gleb
ロシアに公式にキリスト教を導入したキエフ・ロシアの大公ウラジーミルの子で,兄弟。洗礼名ロマンとダビドRoman i Davidでも知られる。ウラジーミルの没後の1015年,ボリスとグレープの兄弟は権力の確保をはかった長子スビャトポルクSvyatopolk(980ころ-1019)の刺客の手にかかって次々に殺された。抵抗もせずに,ひたすら神に祈りながら刺客の到来を待ったという態度がケノーシスkenōsis(自己を空しくすること)の典型と考えられ,スビャトポルクの次のヤロスラフ大公の時代に両者の遺骨が合わせて改葬され,ロシア教会の聖人の列に加えられた。ロシアで大いに尊敬され,イコンの主題にも好んでとり上げられ,2人の名を冠した都市,修道院も少なくない。
執筆者:森安 達也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報