刺客(読み)せっかく

精選版 日本国語大辞典 「刺客」の意味・読み・例文・類語

せっ‐かく セキ‥【刺客】

史記抄(1477)一一「刺(し)客とも刺(セキ)客ともよむものぞ。をそろしい人にたのまれて人を殺つなんどするものぞ」
食堂(1910)〈森鴎外〉「刺客(セキカク)になっても、人を殺しても、なんの為めに殺すなんといふ理窟はいらないのだ」
[補注]「せき」「し」ともに「刺」の漢音

し‐かく【刺客】

〘名〙 人を暗殺する人。殺し屋。しきゃく。せっかく。
神皇正統記(1339‐43)下「而神拝畢退出之処、彼宮別当公暁設刺客之」
読本英草紙(1749)二「船中の人々騒ぎ給ふな。某盗賊刺客(シカク)(〈注〉ヒトコロシ)の類(たぐひ)にあらず」 〔史記‐袁盎伝〕

し‐きゃく【刺客】

※戊辰物語(1928)〈東京日日新聞社会部〉維新前後「江戸へ戻った清河は、板倉周防守の命による刺客(シキャク)につけ廻されるやうになった」

せき‐かく【刺客】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「刺客」の意味・読み・例文・類語

し‐かく【刺客】

《「しきゃく」「せっかく」とも》
暗殺する人。暗殺者
党の規律に反し離党した議員に対し選挙での公認を与えず、失脚をねらって党本部が送り込んだ対立候補。
[補説]2は、平成17年(2005)の衆院選で、自民党本部が郵政民営化に反対した自党議員に対してとった処置に始まる。
書名別項。→刺客
[類語]殺し屋ヒットマン

しかく【刺客】[書名]

藤沢周平による時代小説シリーズ「用心棒日月抄」の第3作。昭和56年(1981)から昭和58年(1983)、「小説新潮」誌に断続的に連載単行本は昭和58年(1983)に刊行

し‐きゃく【刺客】

しかく(刺客)

せっ‐かく〔セキ‐〕【刺客】

しかく(刺客)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「刺客」の読み・字形・画数・意味

【刺客】しかく・しきやく・せきかく・せききやく

暗殺者。〔漢書、遊、万章伝〕河中、王京兆の尹と爲り、豪を捕し、(矢作り)張回・酒市の趙君・賈子光をせり。皆長安の名豪にして、仇怨に報じ、刺客をなり。

字通「刺」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「刺客」の意味・わかりやすい解説

刺客 (しきゃく)
cì kè

中国では,主君あるいは雇主から精神的物質的なさまざまな恩恵を受けた人物が,その恩義に報いるため,あるいは施与に対する報酬契約を履行するために,主君ないし雇主に代わって,その仇とする権力者を刺殺しようと試みる場合,この人物を刺客という。〈〉,とくに〈俠客〉の一種である。〈せきかく〉とも訓ずる。さしむけられる刺客の数は,ねらわれる相手の社会的状況や刺殺の方法によって実際にはさまざまであろうが,司馬遷が《史記》の中で〈刺客列伝〉を作って取り上げているのは,主君と最も深い信頼関係にある1人の人物が,刺客としてほとんど単身で死地に赴く場合である。なぜなら,極秘の計画を絶対にもらさず,厳重な警戒を突破して相手に近づくためには,それに耐えるに足る沈着さと勇猛心を兼備し,最も信頼できる人を選ぶ必要があったからであり,また大事を付託された人物は,その信頼にこたえて〈士は己を知る者のために死す〉という信義を貫こうとする。刺殺目的の成否よりも,そこにあらわれる純度の高い人格的な信義関係を司馬遷は高く評価したからであった。しかし,中国では司馬遷以後,このような視角から刺客をとりあげたものはなくなった。日本では〈しかく〉とも呼び,〈殺し屋〉と同義に用いることが多い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の刺客の言及

【刺客】より

…中国では,主君あるいは雇主から精神的物質的なさまざまな恩恵を受けた人物が,その恩義に報いるため,あるいは施与に対する報酬契約を履行するために,主君ないし雇主に代わって,その仇とする権力者を刺殺しようと試みる場合,この人物を刺客という。〈〉,とくに〈俠客〉の一種である。…

【刺客】より

…中国では,主君あるいは雇主から精神的物質的なさまざまな恩恵を受けた人物が,その恩義に報いるため,あるいは施与に対する報酬契約を履行するために,主君ないし雇主に代わって,その仇とする権力者を刺殺しようと試みる場合,この人物を刺客という。〈〉,とくに〈俠客〉の一種である。…

※「刺客」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android