改訂新版 世界大百科事典 「ポロベツ人」の意味・わかりやすい解説
ポロベツ人 (ポロベツじん)
Polovtsy
チュルク語系キプチャク族のロシア名。西ヨーロッパではクマン人Kumansとよばれた。10世紀ごろまで北西カザフスタンで遊牧生活を送っていたが,やがてボルガ川方面に移動し,11世紀には黒海北岸のステップ地帯,さらにはカフカス方面へと進出した。それ以来ロシア,ハンガリー,ビザンティン帝国にたびたび侵入したが,とくに11世紀末,先住のペチェネグ族を滅ぼしてからは,ロシアとの敵対的関係が激化した。ロシアの英雄叙事詩《イーゴリ軍記》は,このポロベツ人とロシア人との戦いをテーマにしたものである。1220年代に侵入を開始したモンゴル人の前に敗れ,一部はハンガリー方面に逃れて,そこで17世紀ごろまで独自の生活様式を維持していた。
執筆者:栗生沢 猛夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報