イーゴリ軍記(読み)イーゴリぐんき(英語表記)Slovo o polku Igoreve

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イーゴリ軍記」の意味・わかりやすい解説

イーゴリ軍記
イーゴリぐんき
Slovo o polku Igoreve

ロシアの古代叙事詩。作者も作者の身分も不明だが,現在では,イーゴリ公 (1151~1202) あるいはキエフの大公スビャトスラフに仕えていた吟遊詩人か従士の一人の作と考えられている。成立年も 1185~87年頃と考えられるが正確にはわかっていない。 1790年頃ある写本収集家によって偶然発見された。その写本は 1812年のナポレオン軍の侵入によるモスクワ大火焼失。現在残るのは 1796年に書き写された写本原稿と,1800年にモスクワで刊行された最初の活字本だけである。内容は,1185年イーゴリ公が軍を率いてポロベツ族の討伐に遠征したときの事件をうたったもので,ロシア年代記にも記録されている。独特のリズムをもった詩的言語と口碑的様式とを混然と融合させて,ロシア軍の敗北の原因が大公たちの内紛であると指摘しつつ,ロシア民族の統一を呼びかけ,一方では,イーゴリ公の妻の嘆きと祈りを抒情的繊細さをこめてうたいあげ,「古代ロシア文学の真珠」的な作品となっている。

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