改訂新版 世界大百科事典 「マウアー子爵」の意味・わかりやすい解説
マウアー子爵 (マウアーししゃく)
Irineu Evangelista de Sousa, visconde de Mauá
生没年:1813-89
ブラジルの実業家,下院議員。近代経済形成の先駆者。南部地方の貧家に生まれ,11歳のとき首都リオ・デ・ジャネイロに出て店員となった。1830年ごろイギリス商人のもとで働き始め,40年には商用でイギリスに渡り見識を広めた。帰国後の45年以降は独立して大胆な事業活動に乗り出した。46年に南アメリカ最初の本格的造船所をリオ・デ・ジャネイロに創設して帝国海軍力の増強と商業運輸の発達の基礎を築き,52年にはアマゾン川汽船会社を設立した。銀行部門にも力を注ぎ,リオ・デ・ジャネイロにマウアー銀行を開設してイギリスやウルグアイに支店を置き,1851年にはブラジル銀行を立て直した。鉄道建設に情熱を傾け,54年のブラジル最初のいわゆるマウアー線を皮切りに各地の路線開設に投資した。リオ・デ・ジャネイロの都市化を進め,ガス灯の設置,上水道や都市交通の整備などに尽くした。74年にはブラジル~ヨーロッパ間の海底電信を敷設。1854年男爵,74年子爵に叙された。事業悪化のため75年に破産した。
執筆者:住田 育法
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報