改訂新版 世界大百科事典 「マガル」の意味・わかりやすい解説
マガル
Magar
ネパール中央部から西部にかけての標高1200~2500mの山地付近を故地とする人々。人口約29万(1971年の言語人口。実人口より少ないと思われる)。現在ではチベット・ビルマ語派系のマガル語を忘れ,ネパール語を使う人が多い。まわりに耕地,牧場をもつ集村に住み,トウモロコシ,シコクビエ,小麦,水稲(低部で)などを作り,牛,ヤギ,羊などを飼う。イギリス軍,インド軍の傭兵(いわゆるグルカ兵),ネパール国軍人になる人も多い。17~18世紀,西ネパールではマガルの土侯は数ある土侯国中でも有力であり,また18世紀のネパール統一時にはマガル諸勢力はシャハŚāh王朝に協力,ゴルカ(グルカ)勢力の有力な一環をなした。マガル全体は名称をもつ下位集団(タル)に分かれ,内部は父系の親族集団を中心に編成されている。カースト的慣行,火葬,ブラーマン(バラモン)への依存など,宗教・社会面ではヒンドゥー化が著しいが,北部にはラマ教徒もおり,また土着信仰も色濃く残っている。
執筆者:石井 溥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報