ナツメヤシ(読み)なつめやし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナツメヤシ」の意味・わかりやすい解説

ナツメヤシ
なつめやし
[学] Phoenix dactylifera L.

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)フェニックス属の1種。フェニックスの属名は本種が最初に用いられた。種名は、指状のナツメをつけるヤシの意味である。ペルシア湾沿岸の乾燥地帯原産。幹は単一または群生で、直立または傾立し、高さ25~30メートル、径50~70センチメートル。幹肌には葉柄痕(こん)が高く突出し、角(つの)状に残る。葉は羽状葉で50~80枚あり、半光沢で灰緑色。羽片は20~40センチメートルで、葉柄は長い。肉穂花序は黄色または橙(だいだい)色。雄花白色雌花は緑色。果実は楕円(だえん)形で長さ4~7センチメートル、径2~3センチメートル、赤褐色から紫黒色を呈する。果肉には多量の糖分を含み、生食するほか用途が広く、果樹として栽培される。

 普通は雌株50本に雄株1本の割合で条(すじ)植えし、人工授粉を行う。栽培温度は2℃以上で、乾燥地でよく育つ。

[佐竹利彦 2019年5月21日]

利用

砂漠地帯では主食として重要で、利用時の状態から生デート、乾燥デート、除核デートなどと区別される。果肉は柔らかく生食もできるが、天日で乾燥させたものをそのまま、または加工して食べる。乾燥デート100グラムには炭水化物63グラム、タンパク質2グラム、脂質0.2グラム、カルシウム80ミリグラム、リン95ミリグラム、その他ビタミン類を含み、235キロカロリーと栄養価が高い。乾果で菓子やジャムをつくり、またアルコール飲料原料ともする。新葉はガリgariといい、木菜として利用する。

 直径50センチメートルにもなる幹は広く建材に利用され、葉は屋根を葺(ふ)いたり、編んで家具をつくる。花穂からは蒸留して香水タラtaraをとり、樹液は発酵させて蒸留酒アラックarrackをつくるときに加える。核は家畜飼料になり、樹体から分泌するゴム様物質ククムチルkukmchilは薬用となる。また街路樹、庭園樹としても重要である。

[飯塚宗夫 2019年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナツメヤシ」の意味・わかりやすい解説

ナツメヤシ(棗椰子)
ナツメヤシ
Phoenix dactylifera; date palm

ヤシ科の常緑高木(→ヤシ)。ペルシア湾沿岸原産とされるが,サハラ砂漠オアシスにも自生している。西アジアから北アフリカ,新大陸の乾燥地などで広く栽培される重要な作物で,アラビア半島で特に多い。幹は自然状態では束生するが,栽培品の多くは単生で直立または傾立し,高さ 25~30m,直径 50~80cm。葉は硬く,光沢ある灰緑色の羽状複葉で長さ 3mに達する。雌雄異株。黄色または白色の小花を多数つける。果実はおおむね長さ 3~4cmのナツメ状をなす楕円球形,種子は細長く片側に縦の溝をもつ。品種が多く,果実は生食するほか乾果として貯蔵しゼリー,ジャムの原料とする。また茎の先端からとれる樹液はヤシ酒の原料にされる。またこのヤシの葉の繊維をラクダの毛に混紡して,キャラバン(隊商)のテントに使うという。

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