カナート(読み)かなーと(英語表記)qanat

共同通信ニュース用語解説 「カナート」の解説

カナート

イランなど西アジア乾燥地帯で発達した特殊なかんがい用の地下水路。紀元前の古代ペルシャに起源があるとされ、イラン高原中心に西は北アフリカモロッコ、東は中国新疆にまで広がった。長いものは50キロにも及ぶ。(ジョーザン共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナート」の意味・わかりやすい解説

カナート
かなーと
qanat

地下水路式灌漑(かんがい)施設で、アラビア語で地下水路を意味する。乾燥地帯では地表には水はなくても、高峻(こうしゅん)な山脈山麓(さんろく)に発達する扇状地には、山腹から流下してきた水が地下に浸透するので、扇頂部には塩分を含まない地下水が豊富に存在する。そこで母井戸とよばれる深さ20~30メートルほどの元井戸を30~50メートルの間隔ごとに掘り、井底にわき出した地下水を、長さ数キロメートル、ときには40キロメートル以上に及ぶほとんど水平に掘られた長い地下水路で、元井戸から遠く離れた地点まで誘導して集落に良質の飲料水や灌漑水を供給する。地下水路は地表では見えないが、掘り出した土を搬出し、また通風などのために掘られた多数の竪坑(たてこう)が地下水路に沿って配列されているのがカナートの特異な景観である。カナートは紀元前のペルシアに起源をもち、東はアフガニスタンパキスタンから中国のトゥルファンにまで及び(カレーズKarezという)、また西はアラブ人によって北アフリカに(フォガラFoggaraという)、さらにスペイン人によって南アメリカのペルーにまで伝えられたという。

[織田武雄]

 2016年、イランの11のカナートが「イランの地下水路カナート」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録された。

[編集部 2018年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カナート」の意味・わかりやすい解説

カナート
Qanāt

アフガニスタン,トルキスタンではカーレーズ,シリア,イラク,北アフリカなどではフォガラと呼ばれる。西アジア乾燥地帯に行われる特殊な導水設備。自然の泉の水か,扇状地や涸れ川 (ワディ) の河床など比較的地下水面の浅い部分に特別に掘った井戸の水を,必要とする地点まで導くもので,20~30mおきに竪坑を掘り,各坑底をトンネルで結んで導水する。古代ペルシアに起り,その後ペルシア,アラビア勢力圏の拡大,東西文化の交流に応じて旧大陸の乾燥地に広く普及した。単に灌漑にだけ用いられるのではなく,都市への給水も行うものであって,テヘランなどでも近年までカナートの水が利用されていた。

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