日本大百科全書(ニッポニカ) 「マリ・デュプレシス」の意味・わかりやすい解説
マリ・デュプレシス
まりでゅぷれしす
Marie Duplessis
(1824―1847)
フランスの小説家デュマ(子(フィス))の作品『椿姫(つばきひめ)』のモデルとなった高級娼婦(しょうふ)。本名はAlphonsine Plessis。ノルマンディー地方の貧農の娘で、13歳のとき、領主の息子に陵辱され、ロマ(かつてはジプシーとよばれた)とともにパリに出た。3年後、パリのドゥミ・モンド(高級娼婦社会)の女王となった彼女は、上流各界の名士たちを次々にパトロンとして、贅(ぜい)を極めた生活を送った。そのほっそりとしてしなやかな肢体、優雅な鼻、豊かな黒髪に魅せられた男たちのなかには、全財産を蕩尽(とうじん)した者も多数あった。デュマ、ショパン、リストなどの芸術家たちも彼女を賛美したが、なかでも小説『椿姫』によって、その名を史上にとどめられている。肺結核のために23歳で没した。いまはモンマルトル墓地に葬られている。
[榊原晃三]
『アンドレ・モーロワ著、菊地映二訳『アレクサンドル・デュマ』(1971・筑摩書房)』