改訂新版 世界大百科事典 「マンダ教」の意味・わかりやすい解説
マンダ教 (マンダきょう)
Mandaeanism
Mandaism
イラクのティグリス,ユーフラテス下流域およびイランのフージスターンに現存する,グノーシス主義の特異な混合宗教。教徒数は2000人前後と推定される。その名称は,教徒の用いるアラム語の一方言のマンダーmandā(霊知)に由来する。教徒はアラビア語では,サービアṢābi`aと称される。その最も特徴的な儀礼は,流水で浸礼を行うことである。川は北方の山岳に天上より流れ下るとする観念によるもので,教徒は北方に向き礼拝する。浸礼は入信儀礼ではなく浄(きよ)めのためであり,繰り返し実行される。このため,教徒の居住地は必然的に流水の得られる所に限定された。聖典は変形アラム文字で書かれ,《ギンザ》(〈宝物〉の意)が最古(1世紀)で最大のものである。教義面では,西アジア古来の自然信仰を残すほかに,キリスト教グノーシス派,マニ教との関連が指摘されている。
→グノーシス主義
執筆者:上岡 弘二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報