改訂新版 世界大百科事典 「フージスターン」の意味・わかりやすい解説
フージスターン
Khūzistān
イラン南西部,カールーン川下流の地方。フージスターンはアラビア語の呼称で,ペルシア語ではホーゼスターンKhōzestān。現在,同名の州が置かれ,西はイラク国境,南はペルシア湾頭の東海岸,北東はザーグロス山脈が境界線となっている。州都はアフワーズ。面積約6万6500km2,人口427万(2006)。地形的にはメソポタミア平原の一部をなし,住民の多くはアラブ系である。気候は高温・多湿であるが,年降水量は150mm前後と少ない。小麦,大麦,米,綿花,サトウキビ,ナツメヤシが栽培される。古代において灌漑施設を利用した農業が行われ,アケメネス朝の冬の都スーサ,ササン朝の古都シューシュタールなどの都市が繁栄したが,アッバース朝の中期以降,灌漑施設の荒廃により急速に衰えた。しかし,近代になって1908年に油田が発見されると,イラン経済を支える最重要地域として復興した。最近50年間に工業・港湾都市の勃興と発展がみられ,精油所のあるアバダーン,カールーン川がシャット・アルアラブ川に注ぐ地点にある河港で,アフワーズからイラン縦貫鉄道が引き込まれているホラムシャフル,テヘランとフージスターンを結ぶ中央幹線道路沿いの交通の要衝デズフールがその代表である。
執筆者:坂本 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報