聖典(読み)せいてん

精選版 日本国語大辞典 「聖典」の意味・読み・例文・類語

せい‐てん【聖典】

〘名〙
聖人として仰ぐべき人の書き残した書物。また、聖人の言行を記録したもの。
※俳諧・枯尾花(1694)上「信に聖典の瑞を感じける」 〔後漢書‐陳元伝〕
② その宗教の教義の根本となる書。仏教経典キリスト教聖書イスラム教コーランなど。また比喩的に、絶対的な教えをいう。
※僕の手帖(1951)〈渡辺一夫〉四「これを不磨の聖典として」
③ 神聖な儀式
良人自白(1904‐06)〈木下尚江〉前「斯様塩梅に『教誡』の聖典は一と先づ終った」

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デジタル大辞泉 「聖典」の意味・読み・例文・類語

せい‐てん【聖典】

聖人が書き残した書物。聖人の言行を記録した書物。
宗教教団で、教説が記されたものとして重要視されている文書。仏教の各経典、キリスト教の聖書、イスラム教のコーランなど。
[類語]経典教典仏典経文

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「聖典」の意味・わかりやすい解説

聖典
せいてん

宗教の教えや思想の記されている書。教典、経典、聖書ともいう。

 未開宗教や無文字時代の宗教においては、意識的に体系だてられた教義は存在せず、かわって神話が語られ、口承で伝達された。文字の発生によって記録が可能になると、神話のなかには、一定の意図をもって集大成され、聖典とみなされるものが生じる。古代インド教の『ベーダ』Veda、ユダヤ教の『トーラー』Tôrāh(律法)のほか、神道(しんとう)の『古事記』『日本書紀』もそれにあたる。

[鈴木範久]

創唱宗教と聖典

しかし、宗教教団において、聖典が比較的重要視されるのは、ある創唱者によって始められた、いわゆる創唱宗教の場合である。この種の聖典には、仏教経典、キリスト教の聖書、ゾロアスター教の『アベスタ』Avesta、イスラム教の『コーラン』Koranがある。日本の天理教や大本(おおもと)教の『お筆先』も聖典である。これらのなかでも、とくにキリスト教やイスラム教では、各聖典はそのまま「神のことば」とされ、絶対的な位置を占めてきた。聖典は、このように狭い意味では、創唱者に啓示された神のことばをさすが、広い意味では、さらにこれを説明したり、注釈を加えたものまで含むことがある。

[鈴木範久]

宗教的・倫理的生活の基準

一般に聖典の成立には、創唱者の没後、その教説が異なっていろいろに伝えられて、教団が分裂の危機に直面する状態があずかり、創唱者の教説を統一して、教団の統合を図る目的がみいだされる。仏教の「経」すなわち「スートラ」sūtraが物差しに使う紐(ひも)、キリスト教の「正典」すなわち「カノン」kanonが同じく物差しを意味することばから出ていることからわかるように、聖典は、しばしば、他の文書とは異なり、規準となる聖なる「正典」とされる。「正典」から外された文書であるが、それに準じた扱いを受けるものは「外典」とされ、キリスト教では「アポクリファ」とよばれる。聖典は、信者の宗教的・倫理的生活のよるべき基準になる反面、ときに、その内容よりも聖典自体が神聖視され、それを写すことに功徳を認める写経や、呪文(じゅもん)化した読誦(どくじゅ)がなされたりする。

 近代に入り、聖典の文献学的な研究が進むにしたがって、聖典には成立時の社会的背景や編集者の信仰が著しく反映していることが明らかになり、それが一字一句を誤りない神や仏陀(ぶっだ)のことばとする見方はあまりとられなくなった。

[鈴木範久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「聖典」の意味・わかりやすい解説

聖典
せいてん
holy writings

広義には聖人の著作あるいは言行録をさすが,狭義には宗教またはこれに類似する体系にとって,最も基本的なものとされる書物。多く超自然的な影響のもとに書かれたと信じられている。ユダヤ教,キリスト教の聖書,イスラムのコーラン,仏教の経典などが聖典とされる。

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普及版 字通 「聖典」の読み・字形・画数・意味

【聖典】せいてん

経書。

字通「聖」の項目を見る

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