日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムスタキ」の意味・わかりやすい解説
ムスタキ
むすたき
Georges Moustaki
(1934―2013)
ユダヤ系ギリシア人のシンガー・ソングライター。ギリシア人の両親の亡命先エジプトで生まれる。1952年パリに移住。やがてピアフに認められ、彼女のために作詞した『ミロール』がデビュー作になる。以後、自作自演する彼の才能がしだいに注目されるようになり、フランスを中心に幅広く活躍。その作品・歌唱は、地中海音楽を中心にさまざまな音楽ジャンルを融合した、ヒューマニズムにあふれたものとなっている。代表的な歌唱に『ル・メテック(異国の人)』『見知らぬ人』『死刑台のメロディ』など。1980年代以降はテオドラキスMikis Theodorakis(1925―2021)やハジダキスManos Hadjidakis(1925―1994)などの現代ギリシアの作曲家の作品を歌ったり、ギリシアの民族楽器ブズーキを使用するなど、以前よりまして民族的な色彩を強めた。1973年(昭和48)初来日。
[田井竜一]
『山口照子訳『ムスタキ自伝――思い出の娘たち』(1999・彩流社)』