フランスのシャンソン歌手。パリ生まれ。父はサーカスの曲芸師、母は流しの歌手で、少女時代から街頭で歌う。1933年、キャバレー経営者ルイ・ルプレに認められてデビューして成功を収めたが、ルプレが殺されて殺人容疑を受ける。その失意を詩人レイモン・アッソらの激励によって乗り越え、40年には「ピアフの発見者」を自認するジャン・コクトーが彼女のために書いた芝居に主演、女優としても認められた。彼女は庶民の生活感情を庶民のことばで歌う「シャントゥーズ・レアリスト」最後の歌手といわれ、その持ち歌の大半はメロドラマ的なものであったが、優れた表現力によって深い感銘を与えるものに高められた。自身の作詞による『バラ色の人生』『愛の賛歌』のほか、『パダン・パダン』『あなたに首ったけ』『ミロール』『水に流して』などの名唱がある。モンタン、ベコー、アズナブールらの才能を見抜いてデビューさせた功績も大きいが、私生活では恋と結婚に破れ、晩年は麻薬と酒に取りつかれ、59年には自動車事故で瀕死(ひんし)の重傷を負って入退院を繰り返したが、それでも歌への執念は捨てず、死の前年再婚した20歳年下の夫にみとられてニースで没した。
[田井竜一]
『S・ベルトー著、三輪秀彦訳『愛の讃歌――エディット・ピアフの生涯』(1971・新潮社)』▽『J・ノリ著、田口孝吉訳『エディット・ピアフ』(1975・音楽之友社)』▽『D・グリモー、P・マエ著、村上香住子訳『ピアフ 恋の炎』(1984・早川書房)』
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フランスのシャンソン歌手,作詞家。本名エディット・ジョバンナ・ガシヨンÉdith Giovanna Gassion。大道芸人の父母のもとにパリで生まれ,15歳で歌手を志し,独立。娼婦とやくざの街ピガールを舞台に,数々の栄光と悲惨に彩られた人生を歩み出す。1935年,街角で歌っているところを見いだされ,ラ・モーム・ピアフLa Môme Piafの芸名でデビューするが,半年後,殺人事件に巻き込まれて挫折。37年,芸名をエディット・ピアフに改め,ミュージック・ホールABCで再デビューし,歴史的成功を収める。以後揺るぎない地位を確立,名声は世界に及ぶが,4回にわたる自動車事故,その治療がもとでかかった麻薬中毒,肝臓障害など,私生活では生涯不運に見舞われつづけた。全身全霊をこめて歌う彼女の歌をコクトーはとりわけ愛し,1幕物の戯曲《冷淡な美男Le bel indifférent》(1940初演)を書いた。《ばら色の人生》《愛の賛歌》(ともに作詞)などは世界的に知られ,またモンタン,アズナブール,ムスタキら,ピアフが発見し,育てたスターも多い。
執筆者:蒲田 耕二
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