日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムルタノフスキー」の意味・わかりやすい解説
ムルタノフスキー
むるたのふすきー
Борис Помпеевич Мультановский/Boris Pompeevich Mul'tanovskiy
(1876―1938)
旧ソ連における長期天気予報業務の創始者。1912年に主として農業上の必要からペテルブルグの気象台に長期予報研究所が設立され、そこの初代所長となった。1915年、カラ海の結氷についての長期予報を発表したが失敗し、その後の長期予報の発表は中止された。しかし1920年からは試験的に10日~2週間予報、ないしは2~3か月の長期予報を試み、1922年には鉄道管理者のためにイルメン湖の水理を予報、これは成功した。1932年からは毎日の天気予報と同様、定期的な長期予報も発表されるようになり、場合によっては5か月もの長期予報が発表されている。
彼が考えた長期予報は、広域天気図上でたどられた高気圧(気団)の経路とその法則性、同じ天候が持続する自然期間を考慮して合成図をつくり、これに基づいて判断するものであるが、現在ではこの方法によっても2週間以上の期間について予想することは困難であるといわれている。
[根本順吉]