改訂新版 世界大百科事典 の解説
モンタギュー=チェルムスフォード報告 (モンタギューチェルムスフォードほうこく)
第1次大戦終局前の1918年4月にイギリス議会に提出された,戦後のインドに対して行うべき統治上の改革に関する報告書で,正式にはインド制憲委員会報告という。大戦半ばの1917年8月に新たにインド大臣に任命されたモンタギューEdwin Samuel Montaguが〈インドにおける責任政府の漸次的実現〉に関する声明を行い,それに従って現状視察のために来印してインドの藩王や政治指導者らと会見し,総督チェルムスフォードF.J.Napier,1st Viscount Chelmsfordと連名で提出したのがこの報告であった。部分的にであるが,立法と行政の面で初めて州に実体的意味を賦与したのが特徴である。具体的には軍事・外交等の中央政府の最重要事項を除いて,所管事項を州知事とその行政参事会が管轄する保留事項と,州立法参事会の意向が一定程度反映される移管事項とに分けられたが,この体制は両頭制と呼ばれる。しかし総督とその行政部の絶大な権限は依然残った。この報告の骨子は19年インド統治法として実施された。
執筆者:内藤 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報