立法(読み)りっぽう(英語表記)legislation; law making

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

立法
りっぽう
legislation; law making

一般的,抽象的な規範の定立作用。具体的には議会における成文の法規範の制定作用をさす。狭義の立法は具体的な法律制定を意味し,以前は国王など行政部もこの権限を有していたが,議会制民主主義の定着とともに議会固有の権限として確立された。今日,立法が立法部の専権事項であることについては,非常事態など一部の場合を除いて,各国ともに憲法などにより保障されている。しかし広義に立法を解釈した場合,司法が行う判決による法解釈や行政が行う委任立法や具体的法規の適用なども一種の立法作用と理解され,さらには地方公共団体の有する条例や規則の制定も立法のなかに包含される。現実には法の社会的存在のあり方や行政国家化の進行に伴う委任立法の増大などにより,実質的には立法部による立法の専権性はくずれ,今日では立法部以外がなす法解釈や決定が事実上の立法作用をもつにいたり,立法そのもののもつ意味が変質すると同時に立法部の地位も相対的に低下してきている。また,近年では立法の補完的作用として,国民投票などが利用される場合もある。

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百科事典マイペディアの解説

立法【りっぽう】

を制定すること。行政,司法に対する。狭義では法律と呼ばれる法規を制定する国会の作用をいう。広義では,抽象的・一般的法規を制定する作用をいい,法律のほか行政機関による命令,地方議会による条例,最高裁判所による規則(規則制定権を参照)などの制定を含む。→立法機関
→関連項目議会

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世界大百科事典 第2版の解説

りっぽう【立法】

公権力(おもに国家)が一般的・抽象的な準則を定めることをいう。一般的・抽象的準則とは,不特定多数の人の将来の行動を規律するものをさす。しかし,今日においては,具体的な問題を処理するための立法(ドイツでは処分法律Massnahmegesetzと呼ばれる)もみられるようになった。 国家の活動がすべて法に基づかなければならないという原則(法治主義)より進んで,その法が国民の意思を反映していなければならないという原則(法の支配)が,国家機構の中に貫徹する近代以降の民主主義国家においては,国民の意思を選挙を通して反映する議会が,まず,一般的・抽象的な準則(法律)を定め,それに拠(よ)って行政が行われ,あるいは,人々がこの準則に拠って行動し,さらにこれら準則をめぐる争いを裁判所が解決するというしくみが通例のものとなっている。

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大辞林 第三版の解説

りっぽう【立法】

( 名 ) スル
法規を定めること。特に、国会が法律を制定すること。また、立法機関の権限に属する国家作用。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

立法
りっぽう

公(主として国)権力による法律の制定作用。広義には、国会による法律の制定(制定法statute)に限らず、行政官庁たとえば、内閣の発する政令、大臣の命令、最高裁判所による裁判所規則、地方公共団体による条例の制定なども立法の概念に含まれる。狭義には、憲法第41条に「国会は……唯一の立法機関である」と規定されているように、国会における法律制定の作用をさす。[田中 浩]

立法と法の支配

12、13世紀末ごろまでは、ヨーロッパにおいても立法Law-makingという観念はなく、「国王も官吏も神の法、自然法、この国の慣習法に従って統治しなければならない」ということばにみられるように、「法は発見するもの」と考えられていた。このため、「法の支配」といっても、結局は為政者の善意や自己抑制に頼るほかなく、もしも法を無視する専制君主や暴君が出現したときには、法によって抑制することができず、封建貴族たちは暴力によって君主の行為を制限する以外に方法がなかった。しかし、13世紀末のイギリスに議会が設立され、14世紀中ごろまでに下院の立法権が確立されるようになって、議会において制定された法律を守って政治を行うことが「法の支配」であるという観念が定着していった。この意味で、立法という観念は近代的性格をもつものであったことがわかる。もっとも、17、18世紀の市民革命によって近代国家が成立するまでは、各国の絶対君主はなお強大な立法権をもっていたから、そこでは真の意味での「法の支配」はまだ実現していなかった。したがって、近代国家において議会が国民代表的な性格をもつようになって初めて、立法の概念と近代的・民主的な「法の支配」観念とが合致するようになった。第二次世界大戦前の日本では、天皇は勅令その他の立法権をもち、帝国議会は天皇の立法権を協賛する地位にあり、また唯一の立法機関でもなかったから、そこでの立法観念は真に民主的なものとはいえなかった。[田中 浩]

立法過程

国会における立法過程は、発案→審議→議決→公布という順序をとる。発案は、議員はもとより内閣にも認められている。法案には議員提出の法案(Private Bill)と内閣提出の法案(Public Bill)があるが、後者のほうが圧倒的に多くかつ質的に重要なものが多い。内閣は、諸官庁の官僚を動員し、全国家的な視野から法案を作成することができるからである。
 法案の審議は衆・参両院に設けられた各種常任・特別委員会などで行われるが、重要法案については公聴会が開かれ、学識経験者や利害関係者の意見を聴取する。各種委員会において出席議員の過半数で可決された法案は、衆・参両院の本会議に提出される。法案はどちらの院に先に提出してもよいが、予算はかならず衆議院に先に提出しなければならない。本会議はおのおの総議員の3分の1以上の出席をもって開かれ、出席議員の過半数の賛成で法案は議決される。衆・参両院において議決されたとき、その法案は法律となる。もっとも、両院の意見が一致しない場合には、両院協議会を開いて意見調整を図るが、調整がつかないときには、法案に関しては、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数をもって可決(再議決)すれば、その法案は法律となる。なお予算・条約に関しては、両院の意見が不一致の場合、衆議院の絶対的優越が認められている。
 国会において成立した法律は、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署し、天皇の名において公布される。[田中 浩]

立法をめぐる問題点

現代国家は福祉国家とよばれ、経済・労働・社会政策などに関する政府の取り扱う行政事務の範囲が著しく拡大し、いわゆる行政部の肥大化を招き、行政機関による委任立法の数もきわめて増大している。政令には法律の委任がなければ罰則を設けたり、義務を課しもしくは権利を制限する規定を設けることができない(憲法73条6号、内閣法11条)とされているが、このような委任立法の著しい増大は、本来、国民代表機関たる国会においてなされるべき法律の制定作用を軽視し、とかく行政府にゆだねることになりはしないかという問題点が指摘されている。もう一つは、行政府の肥大化とともに、立法過程における官僚の果たす役割が増大し、官僚と議員との癒着がますます深まることによって、国民の意志が十分に立法作用に反映されないのではないか、という批判がある。さらに、国民生活が多様化し、国民相互間の利害がますます複雑化しつつある現代国家の状況下で登場した各種圧力団体の活動が、特殊利益の実現を目ざして、国会における正常な運営をゆがめ、そのことが一般国民の利益を実現すべき立法の機能を妨げている、という危険性を指摘する声もある。ところで2009年(平成21)9月に民主党政権が成立すると、従来の官僚主導型の立法過程を排し、政権政党による政治主導型立法過程へと変更する方向が打ち出されつつある。[田中 浩]

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