日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤクチュ」の意味・わかりやすい解説
ヤクチュ
やくちゅ / 薬酒
朝鮮半島の醸造酒で、清澄な清酒(せいしゅ)をさす。漢方成分などを含む「薬用酒」のことではない。糯米(もちごめ)、粳米(うるちまい)を蒸し、麹(こうじ)(ヌルッとよばれ、麯子(コッチャ)、麹子(クッチャ)とも表し、小麦のふすまを水で練って煎餅(せんべい)状に固めて温暗所でカビをつけたもの)とあわせて、2、3段以上仕込んだものから得られる自然の上澄み部分を薬酒(ヤクチュ)、清酒(チョンジュ)とよび、下層部分を濁酒(タッチュ)とする。薬と無関係なこの酒が薬酒とよばれる由来として、禁酒時代の密造酒が発覚したとき薬用の酒として言い逃れたという説、薬峴(ヤッキョン)という所でつくられた清酒の味がよかったからという説などがある。近年は日本酒のように完全濾過(ろか)をして透明にしたものが商品化され、多くなっている。アルコール分は15%前後で日本の清酒(せいしゅ)とほぼ同じ。法酒(ポプチュ)も薬酒の一つである。
[鄭 大 聲]