改訂新版 世界大百科事典 「ヤスデゴケ」の意味・わかりやすい解説
ヤスデゴケ
Frullania
苔類のヤスデゴケ科ヤスデゴケ属Frullaniaの総称。苔類ではハネゴケ属に次ぐ大きな属で世界に約900種が記録され,とくに熱帯に多い。日本には約30種ある。葉は倒瓦状に重なり,背片と腹片の2片に分かれ,腹片は袋状。腹葉は顕著。花被は袋状でくちばし状の口をもつ。シダレヤスデゴケF.tamarisci (L.) Dum.は全国の低地から高地の樹幹や岩上に生育する。植物体は緑色~赤褐色でニス様のつやがある。茎は匍匐(ほふく)し長さ3~7cm,2回羽状に分枝する。葉の背片は卵形で鋭頭,中央部に赤色で大型の細胞が1列に並ぶ。腹片の袋は円筒形。腹葉は円形で先端が2裂。ミドリヤスデゴケF.ericoides (Nees) Mont.は関東以南の低地の樹幹に着生する。葉の背片は卵形で湿ると反り返る。腹片の袋はヘルメット状。腹葉は円形で先端が2裂する。ヤスデゴケはセスキテルペンラクトン類の一種,フルラノリドfrullanolideを含み,接触性皮膚炎を誘発することがある。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報