改訂新版 世界大百科事典 「ラコーン」の意味・わかりやすい解説
ラコーン
Lakhon
タイの演劇の一種。タイの演劇にはほかにコーン(仮面黙劇),ナン(影絵劇),フン(人形劇)がある。ラコーンの語源にはカンボジア語説と南タイ地名説がある。ラコーンは舞踊から始まったもので,遊歴劇(ラコーン・チャートリー),内劇(ラコーン・ナイ),外劇(ラコーン・ノーク)に分けられる。遊歴劇は内劇,外劇の原形で,インドからマラヤを経て入った。小人数で演じる王中心の劇で,リケー(ジーケー,舞踊音楽劇)もこの流れである。内劇は王宮で女優のみが《ラーマキエン》《イナオ》《ウナルット》を演じ,上品で緩慢な踊りは華麗優雅である。外劇は民間で男優のみ(ただしモンクット王(在位1851-68)時に女優にも解禁)が演じ,テンポが速く庶民的でユーモラスである。外題は《カーウィー》《法螺貝王子》など約30ある。ほかに歌唱劇があり,西洋風歌劇,新派話劇,混ぜ合せ劇なども生まれたが,近年はラジオやテレビに押されてあまり振るわない。
執筆者:冨田 竹二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報