ラーモア歳差運動(読み)ラーモアサイサウンドウ

化学辞典 第2版 「ラーモア歳差運動」の解説

ラーモア歳差運動
ラーモアサイサウンドウ
Larmor precession

回転していないこま重力の作用でただちに倒れるが,回転しているこまはその全角運動量と重力の2方向に垂直な方向に偶力がはたらき,着地点を通る重力方向軸のまわりに緩やかな回転運動をする.これをラーモア歳差運動という.いま,一定の磁場Hが加えられた空間に置かれた原子を考えると,それは全角運動量Jℏと磁気モーメント

μ = gJJμB

をもっている.ただし,gJ はランデ因子(g因子),μBボーア磁子である.したがって,原子の磁気モーメントと磁場の相互作用エネルギーμH最少の-μHとなる原子の方向が一番安定であるが,原子は非常に早い回転をしているため,その回転軸を表しているベクトルJℏが磁場Hの方向のまわりにラーモア歳差運動を行い,その振動数は

ν = gJμBH/ℏ

である.このことは,強い磁場内にある原子のスペクトルゼーマン効果や原子線磁気共鳴によって確かめられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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