ボーア・マグネトンともいう。磁気モーメントの基本単位で、電子が原子核の周りを軌道運動するときに生ずる最小の磁気モーメントである。1913年デンマークの理論物理学者のN・H・D・ボーアが前期量子論に基づいて原子構造を説明した理論のなかで導出した。ボーア磁子μBは、μB=eh/4πmc(hはプランク定数、e、mはそれぞれ電子の電荷の絶対値と質量)で与えられ、μB=9.27×10-24J/Tという大きさをもつ。ここで、J(ジュール)はエネルギーの単位、T(テスラ)は磁束密度の強さの単位である。この単位を用いると、強磁性ニッケルの磁気モーメントは0.6ボーア磁子となる。磁気モーメントを担う電子の角運動量をJとすると、磁気モーメントMはM=-gJJμBとして与えられる。gJはランデのg因子とよばれ、磁気モーメントが電子の軌道運動によるならば1、スピンによるならば2となる定数である。Jは絶縁体中の原子では整数か半整数であるが、金属のように電子が物質中を遍歴できる場合は任意の値をとる。
[石川義和・石原純夫]
軌道角運動量がLの電子は,電子の質量および電荷をそれぞれm,-eとしたとき,-(e/2m)・Lの大きさの磁気モーメントをもつ。量子論によれば軌道角運動量の大きさはプランク定数を2πで割ったℏを単位として測られるから,
μB=eℏ/2m=9.27401×10⁻24J/T
という量が電子によって生ずる磁気モーメントの単位となる。このμBをボーア磁子という。原子構造とその磁気モーメントに関し,N.H.D.ボーアが導入した量である。P.A.M.ディラックの相対論的電子論によると,電子は固有の磁気モーメント(スピン磁気モーメント)をもち,その向きは電子のスピンと逆の向きで,その大きさは1ボーア磁子である。なお原子核の磁気モーメントの単位は核磁子と呼ばれるが,これについては〈核磁気モーメント〉の項目を参照されたい。
執筆者:宮沢 弘成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…gはg因子と呼ばれ,Jがスピン角運動量の場合2で,軌道角運動量の場合1である。μBは電子の磁気モーメントの量子単位でボーア磁子と呼ばれ,μB=eħ/2mc0.9×10-20erg/ガウス(emu)である(e,mはそれぞれ電子の電荷,質量,cは光の速度)。磁性【吉森 昭夫】。…
※「ボーア磁子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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