改訂新版 世界大百科事典 「レバンズエト」の意味・わかりやすい解説
レ・バン・ズエト (黎文悦
)
Le Van Duyet
生没年:1763-1832
ベトナムのグエン(阮)朝(1802-1945)創始の功労者で,南部ベトナム開拓の象徴的人物。中部ベトナムのクアンガイ省に生まれたが南部のミトで成人し,後にグエン朝創始者となるザロン(嘉隆)帝に早くから仕えてともにタイに流寓した。ザロンのベトナム帰還後もタイソン党との戦いに将として活躍し,1802年の全国統一後は中部ベトナムの山地民の反乱の平定や,対タイ外交に功をあげた。20年,ミンマン(明命)帝の登位とともにザディン(嘉定)総鎮に任ぜられ,以後12年間南部の支配をゆだねられた。死去後,総鎮制の廃止と反キリスト教化を政策とするミンマン帝によって,養子レ・バン・ホイ(黎文)の反乱に連座させられ,いっさいの名誉を奪われた。しかしトゥドゥック(嗣徳)帝によって再建された彼の霊廟は,現在南部の人々の信仰の対象となっている。
執筆者:桜井 由躬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報