改訂新版 世界大百科事典 「アダム兄弟」の意味・わかりやすい解説
アダム兄弟 (アダムきょうだい)
イギリス新古典主義の代表的建築家,家具デザイナーの兄弟。父はスコットランドの著名な建築家ウィリアム・アダムWilliam Adam(1689-1748)。兄ロバートRobert Adam(1728-92)はエジンバラの北のカーコーディ生れ。1754-58年グランド・ツアーにでかけ,フランスで古典主義建築家クレリッソーCharles Louis Clérisseauと知りあう。スパラトのディオクレティアヌスの宮殿を実測し,帰国後64年に調査の成果を刊行。またローマでは版画家G.B.ピラネージと親交を結ぶ。やはりグランド・ツアー(1760-63)から戻った弟ジェームズJames Adam(1732-94)の協力をえ,サイアン・ハウス,ケンウッド・ハウス(ともにミドルセックス,1769)など初期の一連の邸宅の室内改修を通じてアダム様式を確立する。連続住宅,アデルフィー(ロンドン,1772)をはじめ都市住宅では,簡素な外観デザインに加え,ダービー卿邸(同,1774)にみられる,各室の形態がすべて異なる,自由で変化に富む間取りを取り入れた画期的な作品を設計した。《アダム兄弟建築作品集》(1773)を出版し,チェンバーズWilliam Chambers(1723-96)とともに18世紀後半の建築に大きな影響を与えた。
執筆者:星 和彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報