アングロサクソン年代記(読み)アングロサクソンねんだいき(英語表記)Anglo-Saxon Chronicle

改訂新版 世界大百科事典 「アングロサクソン年代記」の意味・わかりやすい解説

アングロ・サクソン年代記 (アングロサクソンねんだいき)
Anglo-Saxon Chronicle

イングランド中世前期の政治・軍事史に関する最も重要な史料。紀元元年から編年的に各年におこった主要事件を古英語で記しているが,史料的に重要なのは5世紀なかば以後の部分である。9世紀後半アルフレッド大王のもとで,古い伝承や記録またベーダの《イギリス人の教会史》などの歴史書を材料として編纂されたものが原本で,以後いくつかの教会修道院で書きつがれた。大別して7種の写本(うち1種にはラテン語訳が付される)と2種の断片が現存するが,うち《パーカー年代記Parker Chronicle》《アビンドン年代記Abingdon Chronicle》《ウースター年代記Worcester Chronicle》《ピーターバラ年代記Peterborough Chronicle》の4種が原本に近く,史料的価値が高いといわれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアングロサクソン年代記の言及

【クリスマス】より

…アングロ・サクソン人のキリスト教化はデーン人の侵寇により遅滞ないし後退したが,〈ノルマン・コンクエスト〉までにはほぼ完成した。〈クリスマス〉という用語は《アングロ・サクソン年代記》の1043年の項で初めて使用されている。それ以前は〈冬至祭〉または降誕を意味するNativityの語が使用されている。…

【年代記】より

… 教会および教会内団体史は,カエサリアのエウセビオスらの古代教会史叙述の伝統をうけて,中世のものとしては,セビリャのイシドルス(7世紀),ベーダ(8世紀),マリアヌス・スコトゥス(11世紀)の著作など,早期の例がある。部族史,のちには国家史としては,9世紀には成立したと考えられる《アングロ・サクソン年代記》を筆頭として,13世紀成立のスペイン(カスティリャ)国家年代記や,16世紀初頭まで書き継がれた《フランス大年代記》が代表的である。11~12世紀における自治都市の成立は,都市民の歴史意識を強く刺激し,多数の都市年代記が作成された。…

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