ウォルフ(読み)うぉるふ(英語表記)Christa Wolf

  • 1929―

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ドイツの女流作家。ランツベルク(現ポーランド領)の生まれ。ナチス政権崩壊後は旧東ドイツに育ち、1949年東ドイツの政党SED(ドイツ社会主義統一党)入党。ライプツィヒ大学でH・マイヤーに学んだ。文学上はアンナ・ゼーガースの影響が強い。理論家として出発、『モスクワ物語』(1961)で創作に転じ、東西分裂と東ドイツの現実を扱った『引き裂かれた空』(1963)は「ビターフェルトの道」を実践し社会主義の日常を描出したとして高く評価された。党中央委員候補に選ばれたが、『クリスタ・Tの追想』(1968)で一個人としての自己を再発見し、『幼年期構図』(1976)で国民の意識の空隙(くうげき)を歴史の問題として俎上(そじょう)に載せるに至って党中央の文化路線と決別、『どこにも居場所はない』(1979)、『カッサンドラ』(1983)で独自に文学の疎外の発生と歴史とのかかわりを追求した。ドイツ統一直後の『残るものは何か?』(1990)は東ドイツ時代のアリバイ証明だと批判されたが、『王女メデイア』(1996)を発表してその批判に応えた。[保坂一夫]
『井上正蔵訳『引き裂かれた空』(1973・集英社) ▽藤本淳雄訳『クリスタ・Tの追想』(1973・河出書房新社) ▽保坂一夫訳『幼年期の構図』(1981・恒文社) ▽保坂一夫・中込啓子訳『クリスタル・ヴォルフ選集』全7冊(1997~98・恒文社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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