化学辞典 第2版 「エン反応」の解説
エン反応
エンハンノウ
ene reaction, Alder ene reaction
アリル位に水素をもつアルケン(エン:ene)と多重結合をもつ分子(エノフィル:enophile)とが反応し,二重結合の移動,水素原子の移動,新しい結合の生成がほぼ同時に起こる反応.アルダーのエン反応ともいわれる.
ディールス-アルダー反応におけるジエンの二重結合のうち,1個がC-H結合(σ結合)に置き換わったものとみなすことができる.通常,反応は加熱によって進行し,ルイス酸の存在により加速される.エノフィルには,カルボニル,チオカルボニル化合物やイミン類,アルケン類,アルキン類,酸素分子などが用いられる.また,ルイス酸には,三フッ化ホウ素-エーテル付加物,四塩化スズ,二塩化エチルアルミニウムなどが用いられる.反応機構は,必ずしも協奏的なものばかりではなく,熱によるラジカル反応,ルイス酸触媒によるイオン反応が起こるため,条件により変化し複雑である.
上式のように,不飽和カルボニル化合物においてエノール中間対を経由し,エノール部がエン,アルケン部がエノフィルとして起こる分子内エン反応は,コニア反応(Conia reaction)とよばれる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報