(1)2価の基であるカルボニル基=Oをもつ化合物。カルボニル基をもつ化合物としてはアルデヒド、ケトン、カルボン酸、酸塩化物、酸臭化物、カルボン酸アミド、カルボン酸エステルなど多くの有機化合物が知られている。このうちでも、アルデヒドとケトンはカルボニル基に特有な性質をもっとも顕著に示すので、狭義にはアルデヒドとケトンのことをカルボニル化合物とよぶ場合もある。アルデヒドとケトンに共通な反応としては、ヒドロキシルアミンとの反応によるオキシムの生成、置換ヒドラジンとの反応によるヒドラゾンの生成、セミカルバジドとの反応によるセミカルバゾンの生成がある。ヒドロキシルアミン、置換ヒドラジン、セミカルバジドなどの試薬をカルボニル試薬と総称している。これらの反応のほかに、カルボニル基への付加反応も知られていて、シアン化水素の付加によるシアノヒドリンの生成、亜硫酸水素ナトリウムとの固体付加物の生成もアルデヒドとケトンに共通な反応である。これらの反応はいずれも、カルボン酸とそのエステル、アミドなどではおこらない。カルボニル化合物の製法、用途はその種類により異なる。このほかにホスゲンなどの無機化合物もこの類に属する。
(2)配位子としてのカルボニル(CO)をもつ錯化合物(錯体)。金属カルボニルまたは単にカルボニルとよばれることもある。金属カルボニルは、一般に可燃性の液体または固体であり、水には溶けないが有機溶媒には溶ける。液体の金属カルボニルであるニッケルカルボニル(正式の名称はテトラカルボニルニッケル(0))Ni(CO)4やペンタカルボニル鉄Fe(CO)5は毒性がきわめて強く、蒸気を吸入しても死に至ることがあるので取扱いには注意を要する。
金属カルボニル化合物の合成法はいろいろ知られているが、もっとも簡単な場合には金属と一酸化炭素との直接の反応により得られる。たとえば、細かく粉にした活性なニッケルに常温加圧下で一酸化炭素を反応させるとニッケルカルボニルを生成する。
同様な方法により、ペンタカルボニル鉄も合成できる。このほかに、金属炭酸塩や金属塩化物と還元剤とを一酸化炭素と反応させる合成法も多く知られている。
金属カルボニルの用途としては、レッペ反応として知られているアセチレンのカルボニル化の触媒としてニッケルカルボニルNi(CO)4が用いられるほか、コバルトカルボニルCo2(CO)8やロジウムカルボニルRh2(CO)8も一酸化炭素を原料とする有機合成の触媒として有用である。金属カルボニルの分解により得られる金属はきわめて純度が高いので、高純度の鉄、ニッケルの製造にも利用される。
[廣田 穰]
『梅沢喜夫・大野公一編、竹内敬人編著『有機化学』(1998・岩波書店)』▽『大嶌幸一郎著『基礎有機化学』(2000・東京化学同人)』▽『Saul PataiThe chemistry of the carbonyl group(1966, Interscience Publishers, London and New York)』
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
オキソ化合物ともいう.アルデヒド,ケトン,ケテンなど,カルボニル基をもつ有機化合物の総称.カルボニル化合物では,カルボニル基にHまたは炭化水素基が結合しており,-OH,-OR,-NR2,-Clなどの陰性基が結合したものは,カルボン酸または炭酸およびそれらの誘導体として分類され,普通,カルボニル化合物とはいわない.[別用語参照]オキソ
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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