日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオン反応」の意味・わかりやすい解説
イオン反応
いおんはんのう
ionic reaction
イオン間あるいはイオンが関与する化学反応のことをさすが、主として電解質溶液内の反応をいう。
水溶液での反応の多くはイオン反応で、沈殿生成反応、錯生成反応、酸塩基反応、酸化還元反応などがある。イオン反応を表す化学反応式をイオン反応式とよび、たとえば硝酸銀水溶液に塩化ナトリウム水溶液を加えて塩化銀を沈殿させる反応を、
Ag++Cl-→AgCl↓
のように、反応に関与するイオンだけで書くことが多い。錯生成反応の例として、
Ni2++4CN-→[Ni(CN)4]2-
酸化還元反応の例として、
MnO4-+5Fe2++8H+
→Mn2++5Fe3++4H2O
などがある。
放射線による気体分子のイオン化や電極表面での酸化還元もイオン反応である。
[岩本振武]
カチオノイド反応とアニオノイド反応
有機化合物の反応において、イオン以外の物質でも反応過程でイオン性物質として作用する機構が考えられるときにはイオン反応とよぶ。たとえば無水塩化アルミニウムの存在下でベンゼンにハロゲン化アルキルを作用させてアルキルベンゼンを得るフリーデル‐クラフツ反応では、見かけ上、
C6H6+RCl→C6H5R+HCl
アルキル基が陽イオンとして作用している。このような反応をカチオノイド反応、あるいは求電子反応、親電子反応という。逆に、アセトアルデヒドにアンモニアが付加する反応では、
CH3CHO+NH3→CH3CH(OH)NH2
アルデヒド基の炭素原子に陰イオン性のアミノ基が付加しており、このような反応をアニオノイド反応、あるいは求核反応、親核反応という。
[岩本振武]