ラジカル反応(読み)らじかるはんのう(英語表記)radical reaction

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラジカル反応」の意味・わかりやすい解説

ラジカル反応
らじかるはんのう
radical reaction

化学反応過程ラジカル遊離基)が関与する反応をいう。フリーラジカル反応あるいは遊離基反応ともいう。各種の化合物の反応には大別してイオンあるいはイオン性の中間体を経由するイオン反応、ラジカルや原子を経由するラジカル反応と、これらをまったく経由しない協奏的反応とがある。たとえば、多く有機化合物は空気中で酸素により穏やかな条件下で酸化されるが、これは一般にラジカル反応として進行する。炭素化合物から生じたラジカルは、一般に酸素ときわめて反応しやすく、生成したペルオキシラジカルはまた多くの有機化合物の分子と反応しやすい結果、有機化合物は酸素により酸化されやすい。したがって、酸素下で油脂高分子などの有機化合物は酸化により劣化しやすいが、他方、酸化を積極的に利用して各種の有用な物質を製造する。また、トルエンなどの炭化水素塩素とともに光照射すると、生成した塩素原子と炭化水素が反応し、後者から生じた有機ラジカルが塩素と反応して塩素化生成物を生ずる。また、石油系の炭化水素を加熱により分解して、分子量の小さい有用な炭化水素を製造するクラッキングの過程も、炭化水素の分解で生じた有機ラジカルが関与する。

 スチレンメタクリル酸メチル酢酸ビニルなど、多くの不飽和化合物の付加重合もラジカル反応により進行するものが多い。これは、ビニル単量体にラジカルが付加し、生じたラジカルがさらにビニル単量体に付加していくことにより大きい分子量の高分子を生成するからである。

[徳丸克己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラジカル反応」の意味・わかりやすい解説

ラジカル反応
ラジカルはんのう
radical reaction

有機反応の1つで,その過程においてラジカル (遊離基 ) が関与する反応。光,熱などによって安定な結合が切れてラジカルを生じる反応,ラジカルと安定分子との結合によって新しいラジカルができる反応,ラジカルが分解して新しいラジカルと安定分子になる反応,ラジカル同士が反応して安定分子を生じる反応などがある。

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