日本大百科全書(ニッポニカ) 「オムシャ」の意味・わかりやすい解説
オムシャ
おむしゃ
江戸時代の北海道で、蝦夷(えぞ)地の各商場(あきないば)ごとに行われたアイヌ撫育(ぶいく)策の一つ。アイヌ語のウムシャ(無沙汰(ぶさた)の挨拶(あいさつ))の訛(なま)ったもの。ウイマムがもともと隣邦の首長の居住地または城下での交易儀礼であったのに対し、オムシャは、アイヌの居住地である蝦夷地での交易に伴う挨拶儀礼として発生した。しかし松前(まつまえ)藩成立(1604)後、ウイマムが事実上松前藩主への御目見得(おめみえ)行事に変質したように、オムシャもまた挨拶儀礼から蝦夷地商場での交易や漁業終了時の慰労行事へと変質していっただけでなく、運上屋(会所)に商場内のアイヌを集めて諸掟(おきて)を読み聞かせたうえで役夷人(やくいじん)の任免、役料の支給、善行者への褒賞の給与を行うなど、商場内のアイヌを統治、支配するための主要な年中行事となっていった。
[榎森 進]
『高倉新一郎著『アイヌ政策史』(1942・日本評論社)』