日本歴史地名大系 「アイヌ政策史」の解説
アイヌ政策史
アイヌせいさくし
一冊 高倉新一郎著 日本評論社 昭和一七年刊
解説 本書は植民学・植民政策論の立場から、アイヌ政策を日本の植民史上の一現象として把握しようと試みたものであり、日本の植民地経営の科学的資料を提供しようとした著作。アイヌ政策の系統的な歴史研究としては最初の労作といえる。蝦夷島が日本の封建体制の一角、松前藩の領する所となった時代以降、明治三二年の北海道旧土人保護法の施行に至るまでの長期間にわたり、アイヌ政策を詳細にかつ批判的に記述している。その間の時代変遷は、商業植民時代、搾取植民時代、居住植民時代と経過し、異国であった蝦夷地の内国化の過程でもあり、また封建時代から近代資本主義体制への変化でもあった。著者は、欧米の原住者対策との比較も行い、過酷な取扱の類似性も指摘し、幕府以下の同化政策の可否も論じている。本文六三三頁、巻末に三七頁の引用書目解説を付す。
構成 第一章序論、第二章前松前藩治時代、第三章前幕府直轄時代、第四章後松前藩治時代、第五章後幕府直轄時代、第六章開拓使・三県・道庁時代、第七章結論。昭和四七年「新版アイヌ政策史」(内容は旧版とほとんど同じ)刊行。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報