日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルト化合物」の意味・わかりやすい解説
オルト化合物
おるとかごうぶつ
ortho compound
普通次の二つの意味に用いられる。
(1)ベンゼンの二置換体で、置換基がベンゼン環上で隣り合わせの炭素原子に結合しているものをいい、記号o‐を用いて他の異性体と区別する。
(2)オキソ酸の分類に用いられる。オルトは正の意味を示しており、見かけ上、酸性酸化物に水が付加して生じたオキソ酸において、水の付加数の大きいものをオルト酸という。リン酸を例にとると、五酸化二リンP2O5に対して3分子の水が付加した形式のものをオルトリン酸、2分子のものをピロリン酸、1分子のものをメタリン酸という。
オルト酸の塩をオルト塩とよぶこともあるが、これらは正式の命名法に従うものではない。オルト酸は、たとえばオルトリン酸を単にリン酸とよぶように、他と区別するとき以外には、とくに用いられることは少ない。
有機カルボン酸やアルデヒドでは、見かけ上さらに1分子の水が付加したオルト酸やオルトアルデヒドの存在が考えられるが、わずかな例外を除けば安定に単離するのは困難である。しかし、それらの誘導体であるオルト酸エステルやアセタールには安定な化合物の存在が知られている。
[岩本振武]