日本大百科全書(ニッポニカ) 「位置異性体」の意味・わかりやすい解説
位置異性体
いちいせいたい
position isomer
構造異性の一種である位置異性によって生ずる異性体。主として有機化合物にみられ、鎖式炭化水素での分鎖の有無、あるいは分鎖の位置による異性、ベンゼンなどの環式化合物の置換体における置換基の位置の差による異性などがある。炭素原子数5の飽和炭化水素を例にとると、ペンタン、イソペンタン(2-メチルブタン)、ネオペンタン(2,2-ジメチルプロパンまたはテトラメチルメタン)の3種がある。一般に炭素原子数が増加するにつれて、異性体の種類も多くなる。ベンゼンの二置換体にはオルト、メタ、パラの3種類があるが、三置換体になると、C6H3X3型で3種、C6H3X2Y型で6種、C6H3XYZ型では10種の位置異性体がありうる。ナフタレン環その他の環状構造でもさまざまな位置異性体がありうる。
[岩本振武]