ケンブリッジ歌謡集(読み)ケンブリッジかようしゅう(英語表記)Carmina Cantabrigiensia[ラテン]

改訂新版 世界大百科事典 「ケンブリッジ歌謡集」の意味・わかりやすい解説

ケンブリッジ歌謡集 (ケンブリッジかようしゅう)
Carmina Cantabrigiensia[ラテン]

11世紀に書写編纂された,もっとも古い中世ラテン抒情詩集の一つ。現在ケンブリッジ大学図書館に収蔵されているためにこの名で知られている。収録されている49編中の詩の大半は下ライン川流域で作られ,残りはフランス,イタリアなどの学僧たちの作であり,わずかではあるが古典期ラテン詩からの抜粋も含まれていて,中世抒情詩集としては大陸色の濃い特徴をもつものである。半ばは賛美歌続唱(セクエンティアエ)であるが,聖母マリア,キリスト復活,聖者伝などの宗教的抒情詩,王侯の戴冠式祝詩,頌徳詩,葬礼追悼詩など歴史上のできごとをテーマにした諸詩編もある。また数は少ないが春の歌,夜啼鶯の歌,森にさえずる鳥の詩や,恋情をつづる純粋な抒情詩なども収録されており,それらは多彩な中世詩歌風の律格に盛られている。
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世界大百科事典(旧版)内のケンブリッジ歌謡集の言及

【ラテン文学】より

…10世紀のオットー帝国もイタリア文化を尊重してラテン語を公用語にしたが,12世紀から13世紀にかけて再びルネサンス運動が起こって,ボローニャ,パリ,オックスフォードなど各地に相ついで大学が創設され,アベラール,トマス・アクイナス,R.ベーコンなどの大学者が登場した。このころに《ケンブリッジ歌謡集》《カルミナ・ブラーナ》などの詩集と,《黄金伝説》《ゲスタ・ロマノルム》などの伝説集が成立している。 14世紀はダンテ,ペトラルカ,ボッカッチョの世紀,イタリア・ルネサンスの前夜である。…

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