コミッサール(英語表記)komissar

改訂新版 世界大百科事典 「コミッサール」の意味・わかりやすい解説

コミッサール
komissar

ロシアおよびソ連邦で,特定部門における全権を帯びた委員をいう。ロシアでは,1917年の二月革命後,臨時政府が帝政時代の県知事に代わる地方行政官として県コミッサールを,郡には郡コミッサールを任命した。また軍隊にもコミッサールが派遣され,十月革命の過程では多くの機関や企業の長らも一時期さまざまなコミッサールを名のった。その後も使用された主要なものは,次の二つである。(1)人民委員narodnyi komissar(1917-46) 十月革命後組織されたソビエト政府内の各政策担当部門(人民委員部と呼ばれ,現在の省にあたる)の長のこと。政府全体は人民委員会議と名づけられた。46年より旧来大臣に改称された。(2)軍事コミッサールvoennyi komissar(1918-42) ソビエト赤軍内における政治指導の責任者をいう。当初は旧帝政軍の将校指揮官に登用したため,その監視をも兼ね,指揮官の命令には軍事コミッサールの副署が必要とされた。1925年以降,一部部隊で指揮官の単独責任制が導入されたが,37年にコミッサールが全面復活,42年に廃止された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のコミッサールの言及

【ソビエト連邦】より

… 当時の赤軍にとって最大の難問は,階級的ないしイデオロギー的純粋性と戦闘効率とを,いかにして両立させるかであった。RVSR(議長トロツキー)の採った応急策は,旧帝政軍の将校を〈軍事専門家〉として赤軍に編入し,その政治的目付役としてコミッサールを併せて配置することであった。こうしてイデオロギーか,専門的知識・技術かのジレンマは,その後も長く尾を引くことになるが,このほかにも組織原則(正規軍対民兵)をめぐる論争があり,いずれも赤軍誕生時の事情に起因する。…

※「コミッサール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android